ソニーはアマゾンのFire TVやグーグルのChromecastに対して、クラウドベースのテレビサービス「PlayStation Vue」を提供し、月額料金を引き下げると発表した。ソニーはこれまで、自社以外の製品にネットワークサービスを提供したことがなかった。
IT企業の主戦場はクラウド領域に移っており、ユーザーはすべての既存のネット接続機器でクラウド接続が可能だ。中投顧問高級研究員の賀在華氏は、「クラウド市場で競争が激化しており、各大手IT企業が市場シェアの争奪に乗り出している。ソニーはアマゾンとグーグルにクラウドテレビサービスを開放することで、両社の市場における高いシェアを利用し利用者を拡大し、市場競争において地位を固めることができる」と分析した。
競合他社にクラウドサービスを開放することには、ソニーのやむなき事情が隠されている。ソニーは先ほど、2014年度の赤字を1700億円に縮小したと発表した。ソニーは2008年から2014年の7年間のうち、2012年に430億円の黒字を計上しただけで、その他の6年は赤字に陥っていた。赤字額は、1兆1500億円に上った。
業績の持続的な低迷は、市場で有利な立場を占めていた携帯電話・テレビ事業の不振が原因だ。ソニーがモバイル通信事業部とテレビ事業の売却を検討しているという噂が絶えず流されているが、ソニーは正式にこの噂を否定している。しかし残酷な現実を受け、ソニーの内部も、大きな変革により長期的な発展を求める必要性を意識している。
ソニーモバイルコミュニケーションズの十時裕樹社長は、「利益率が低すぎるということは、当社の事業に不合理な点があるということだ」と述べた。モバイル事業に新たに就任した担当者も、「人々の意思疎通の方法を再定義する」必要性を認めたが、ソニーの最も根本的な課題は利益創出だ。
十時社長は、「ソニーはモバイル事業を、業界の次の革新の流れに導入しようとしている。この革新は携帯電話というハードではなく、ソフトの革新だ。人々の過去の交流は主に言語を通じて行われていたが、現在は写真や絵文字が中心だ。当社が自社をスマホやその他のハードに縛り付けることはない」と述べた。
ソニーは利益を創出するため、重点をハードからソフトに置き換えようとしており、競合他社にネットワークサービスを開放してでも、ユーザーを拡大しようとしている。賀氏は記者に対して、「ソニーが直面しているハードの低迷は、業界内の企業全体の普遍的な問題だ。この難題を解消するためには、その他のIT企業との業務提携を拡大し、ハードのスマート化の水準を高める必要がある。この2つの取り組みにより、市場の需要を拡大する。ソニーのモデルチェンジの将来性は未知数だが、少なくともソニーはモデルチェンジの道の模索を開始した」と述べた。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2015年11月23日