◇減税で得をするのは誰か
注意すべきなのは、減税で配慮すべき最大の問題と言える税源問題が安倍首相に軽視されていることである。
安倍首相によれば、減税は、より多くの企業に利益を広げるためであり、消費税率が10%に引き上げられる2017年4月までに多くの庶民の収入が高まっているようにするためである。このために税制改革には、環境負荷の低い自動車の税率は0%とするなどの環境保護性能に基づく新たな課税制度が盛り込まれた。
企業税を減らしておいて消費税を引き上げるという安倍政権の措置では、政策の受益者が逆転している。
劉研究員は、安倍首相の財政政策は、消費税で集めた庶民の金を減税で富裕層に移転するものだと指摘する。「貧者から奪い富者を助ける」というこのようなやり方は長期的には、社会全体の構造に負の影響を与えかねない。
商務部研究院アジア研究所の徐長文研究員も、消費税率の引き上げは庶民の金を奪うことであり、企業税率の引き下げは明らかに大企業に利益を与えるものだと指摘する。また近年の円安は、輸出型の大企業を有利にする一方で、日本の内需型企業や中小企業の経営をより苦しくしている。このように考えれば、得をするのが誰かは明らかだ。
安倍首相の経済政策は矛盾に満ちたものである。
劉研究員によると、日本の財政全体は苦境に陥っており、国内総生産に対する国家債務の比は240%に達している。このような状況では、減税のために持ち出すことのできる財政資金には限りがある。減税がどの程度なされるとしても、財政負担が増えるのに変わりはない。減税にはさらに、当初の消費税引き上げのねらいとまるで逆行しているという問題がある。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2015年12月28日