◇深刻な「スモッグ」の源は、釣魚島の主権を巡る食い違い
確かに歴史問題における中日関係は、理想的な状態ではない。例えば日本の侵略の歴史と植民地支配に関する国会決議がなされておらず、中国に書面による謝罪を行ったこともない。日本の首相は替わるたびに言うことをころころ変え、隣国の不信任と不快の原因となっている。
中日関係の「スモッグ」の源は、釣魚島の領土・主権の帰属に関する認識の食い違いだ。歴史問題と異なり、日本政府・民間および各種政治勢力は、同問題について長期に渡りほぼ一致した立場を維持しており、区別は困難だ。領土問題は民族の一体感を形成しやすく、短期間内の解決は困難であり、更には両国の国民感情に影響を及ぼす。ゆえに中日両国の前の世代の指導者は、中日関係を発展させるため係争を棚上げにした。
係争の棚上げにより、一次的に対立を和らげることができる。しかし日本の各党と国民が、釣魚島問題の真相を理解しているとは限らないという、潜在的な問題がある。日本政府は現在、中日に領土をめぐる係争があることを認めず、また係争を棚上げにしたことを認めていない。さらには大々的に輿論戦を展開し、一部の捏造したものを宣伝している。これには例えば▽古賀辰四郎が1884年に人員を派遣し釣魚島を開拓した▽1895年に日本が釣魚島を占領するまで、これらの島々は「無主地」だった▽中国は1971年に石油資源の埋蔵が確認されてから釣魚島の主権を主張した――という説がある。これらはすべて事実無根であり、「スモッグ」の汚染源と同じく、日本人の間で誤解が深まっている。このような「スモッグ」が猛威をふるうなか、中国海警局の巡視船による釣魚島の領海内での巡航が、日本によって「領海侵入」とされている。日本の高官は海上自衛隊を派遣し対応すると高圧的な態度を示したが、国内でこれに強く反対する動きはなかった。
釣魚島問題は、日本の右派が日本人の中国に対する団結力と負のエネルギーを集め、戦後の規制を打破し改憲を実現するための道具になりやすいことが分かる。彼らは釣魚島を政治的目標を実現する支えとしており、さらに軍事力の配備を進めている。彼らは今年7月の参院選に勝利するため、中国側の過激な言行に期待している。
筆者の調べによると、日本が1874年に初めて台湾を侵略するため派兵し、1894年に甲午戦争(日本名・日清戦争)を発動するまで、日本の海軍省と外務省の地図および文書は、釣魚島を中国領としていた。しかし現在の圧倒的多数の日本人は、そのことを知らない。釣魚島は小さいが、中日の戦略に関わる全局的な問題を引き起こしている。中日関係は現在、全体的に見て対立していないが、釣魚島の領土問題には対立が見られる。これを適切に処理できなければ、一部の対立が中日関係全体の対立を引き起こす。そのため中日間でこの大気汚染を解消するため、中国は釣魚島の真相について、日本側に的を絞った説明を続ける必要がある。(筆者:劉江永 清華大学国際関係研究院教授)
「中国網日本語版(チャイナネット)」2016年1月25日