アベノミクス、構造改革につながらず
張氏は、アベノミクスはすでに失敗したと判断した。まず、日本経済は低迷から脱却しておらず、2年内に2%という物価目標も実現されていない。アベノミクスの実施から3年以上が経過するが、消費増税の影響を除くコアCPIの上昇率が、1.5%を上回ったことはない。日本経済の2013年の成長率は1.4%、2014年は0%、2015年は0.4%で、3年平均でわずか0.6%だ。それまでの20年間の成長率は平均で0.9%だ。調査結果によると、7割以上の国民は、アベノミクスによる恩恵を実感していない。
次に、アベノミクスが打ち出した長期目標の、ほぼすべてが実現不可能だ。1つ目の「今後10年間の名目GDP成長率を平均3%、実質GDPを2%とする」という目標についてだが、過去20年間のデータは前者が−0.1%、後者が0.9%となっている。2つ目の長期目標の「国と地方の財政赤字の対GDP比を2010年から半減させ、2020年に黒字化を実現する」についてだが、財務省は年平均2%の成長目標を実現したとしても、2020年には1.6%の財政赤字が残るという試算を出した。アベノミクスは労働生産性の向上、対日直接投資の倍増といった20以上の具体的な指標を打ち出したが、年平均2%の成長を実現できなければ、これらは机上の空論にすぎなくなる。
それから、安倍首相は昨年9月、「名目GDP600兆円」「出生率1.8」「介護離職ゼロ」という、いわゆる「3本の矢」を打ち出した。しかし新3本の矢の目標は、ほぼ実現不可能だ。
日銀は1月末、前代未聞のマイナス金利政策を発表し、経済を刺激した。これはアベノミクスの失敗を宣言した形となった。統計基準を変え、数遊びをしようとしているなら話は別だが。
賃金の減少、消費に消極的
張氏は、日銀が量的緩和策の規模を拡大し続けているが、効果は微々たるものだと指摘した。安倍首相とシンクタンクが、デフレの原因を読み誤っていることが原因だ。
量的緩和策は市場の流動性を拡大できるが、物価に影響を及ぼしている真の要素は賃金の減少だ。アベノミクスの出発点は、物価上昇率を高め、国民の消費の意欲を刺激し、消費を促進することにある。この方法は本末転倒だ。賃金が増えなければ、買いたくても買えない。デフレの原因は物価上昇への不信感ではなく、賃金の減少にある。日本の賃金は1995年から慢性的な低下の状態にあるが、欧米では上昇している。これはこの10数年間に渡り、同じ先進国である米国や欧州の各国で、デフレが発生しなかった理由だ。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2016年2月20日