アベノミクスはほぼ失敗しており、アベノポリティクスには違憲の疑いがあり、アベノ軍事学は好戦的だ。しかしこれらすべてを合わせても、「アベノ教育学」ほど日本とアジア太平洋に深刻な損害と毒をもたらさないだろう。
日本の文部科学省は3月18日、新しい高校教科書の検定結果を発表した。文部科学省が検定を繰り返し、文句をつけると、妥当な意見を持っていた多くの出版社は、歴史・領土・改憲などの問題の立場の修正を強いられた。「去勢」された教科書は、安倍政権の右寄りの立場に歩み寄り、歴史の真実や人類の良識から遠くかけ離れている。
歴史問題を例とすると、「南京事件」(南京大虐殺)は日本の近代史の教科書が避けては通れない話題だ。これまで大半の教科書は、極東国際軍事裁判所の判決文などの歴史資料とさまざまな説に基づき、20−30万人という具体的な犠牲者数を記載していた。ところが今回の検定において、日本政府はこれらの教科書に対して具体的な人数を削除するよう求め、「多くの」であいまいに処理した。
日本の高校生はこの内容を学習する時に、「多くの」から「大虐殺」という血なまぐさい殺戮の光景を想像することは不可能だ。「多くの」というあっさりとした表現には、歴史の真相を日本人の記憶から永遠に抹消しようという、安倍政権の最終目的が隠されている。
安倍版の教科書が歴史問題を無視しているとするならば、領土問題では現実を無視している。これまでの教科書は、中国固有の領土である釣魚島(日本名・尖閣諸島)、日韓の係争中の竹島(韓国名・独島)、日露の係争中の北方四島(ロシア名・南クリル諸島)について記述する際に、領土問題の背景や相手国の主張について説明していた。しかし安倍政権による今回の検定後、領土問題について記述した24の高校教科書のすべてが安倍政権の立場に修正し、「固有の領土」という表現を採用した。
安倍政権のこの「領土教育」には、非常に明確な政治的動機がある。領土係争の食い違いを刺激し、これを固定化させることで、日本のナショナリズムを煽る。こうして改憲や軍事大国化などの政治目標に、持久的な原動力を提供する。
日本の教育界の関係者は、安倍政権のやり方は多様化を奨励する教科書検定制度の当初の目的に背いており、戦前の教科書制度に逆戻りしたような印象を与えると批判・指摘した。
安倍首相は歴史修正主義を自らやってのけ、「アベノ教育学」により修正主義的な見解と好戦性を教室に持ち込もうとしている。これは日本の次の世代に悪影響を及ぼすほか、日本と近隣諸国の歴史を巡る真の和解を長期的に妨げる可能性がある。これは日本の未来にとって、喜ばしいことではない。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2016年3月21日