南中国海のいわゆる仲裁結果が発表されてから数日たつが、その内容が常識はずれであるため、一部の国が望むような一方的な輿論は形成されていない。
第二次大戦後の数十年に渡り、米日同盟は東南アジアで念入りな手配りを進めてきた。米国は「地域安全」という旗印をかかげ、日本はこれに合わせ目標国に経済的な利益を提供し、フィリピンなどの国で「安全+経済」という二重の利益を結びつけた。米国の「アジア太平洋回帰」に伴い、日本はその駒になろうとしている。南中国海問題が刺激される重要な時に、米日は当然ながらフィリピンを抱き込もうとする。
ただし自分勝手な「仲裁裁判所」の出した結果では、米日の「フィリピン抱き込み」という計算が実現されない。また「安全+経済」という甘いケーキも、魅力を失っている。
安全について、南中国海問題でひとたび軍事力が行使されれば、中米関係さらには世界の大国関係を変える引き金になる。米国が軍事介入するか否かはさておき、フィリピンは板挟みになるしかない。米国は「安全」を与えられない。
経済について、フィリピンのドゥテルテ新大統領は大統領選から「草の根」をアピールしていた。ドゥテルテ大統領の3大公約の一つは、経済振興だ。ドゥテルテ政権のフィリピンの核心的利益に対する認識が、南中国海により米国側に完全に傾いたアキノ政権と異なることが分かる。
輸出中心の経済体であるフィリピンは、外資誘致により経済をけん引しようとしている。2013年まで、米日同盟はフィリピン経済の高い割合を維持していた。フィリピンは主に、日本、米国、英国から外資を受け入れている。2015年まで、米日はフィリピンにとって最大・2位の貿易パートナーの地位を占めていた。
世界金融危機以降、経済・政治秩序の多元化が大きな流れとなった。時代の流れに順応し、中国と一部のアジア諸国は危機後に成長を維持し、相互の経済依存度と国際的な地位が大幅に上昇した。貿易について、中国商務部駐フィリピン経済商務所が引用したフィリピン国家統計局のデータによると、フィリピンの2015年の対外貿易総額は1253億3400万ドル。その1−3位の貿易相手国は日本、中国、米国の順で、貿易額の15%、13.7%、12.8%を占めた。この1年間に南中国海問題で激しく対立したが、中国はフィリピンにとって2番目の貿易相手国になった。
外資について、ドゥテルテ内閣が打ち出した10項目の経済計画では、「より多くの外国直接投資を誘致し、インフラ支出の対GDP比を5%とする」とされた。これによりフィリピンはアジアインフラ投資銀行(AIIB)に積極的に加入した。中国が提唱するAIIBと「一帯一路」(シルクロード経済ベルト、21世紀海上シルクロード)戦略は、東南アジアのインフラ整備の遅れという重大問題の解消を目的としており、フィリピンの最も差し迫った需要に合致する。
いわゆる仲裁結果が発表されると、日本と日本が主導するアジア開発銀行(ADB)は大急ぎで「10項目の経済計画を支持する」と表明し、巨額の資金をフィリピンに投じることを決定した。しかしADBの主な投資目標はインフラではなく、フィリピンのインフラ投資の切実な需要を満たし難い。
フィリピン新政権が最近示した自制と理性は、ドゥテルテ政権が国民生活を重視していることを示した。「仲裁案」を飛び越え、より広い視野によりアジア太平洋の多元化の流れにおける国益を判断する。当面の急務は係争ではなく、発展だ。ただし米日の妨害により、各国は騎虎の勢いになっており、全員が敗者になる恐れがある。政治的な食い違いを処理できなければ、協力を語ることは出来ない。
そのため中比および域内国にとって最も重要な任務は、政治的相互信頼の再構築だ。域外の干渉を取り除き、交渉を再開するのが、唯一の手段だ。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2016年7月19日