○「80後(1980年代生まれ)」作家の作品には中国の若者たちの現状を反映すべき
Q(記者):NHK中国語講座で、氏は韓寒の「1988:ぼくはこの世界と語りたい」を教材として取り上げたが、この小説を選んだ理由は?
千野氏:同講座は中国の現状と文化を紹介することを目的の一つとしているので、この機会を利用して、日本の人々に現代中国青年の文化を紹介したいと考え、同作品を教材として取り上げた。同講座では語学講座という点を考慮し、韓寒の「1988:ぼくはこの世界と語りたい」、それから阿乙の小説、劉慈欣の「三体」という3本の文学作品を教材として選んだ。当時、劉慈欣はまだヒューゴー賞(優れたSF・ファンタジー作品に贈られる賞)を受賞していなかった。また韓寒はやや「過去の人」になりつつあるが、それでも中国社会に対する影響は軽視できない。
Q:中国「80後」世代の作家が書いた作品に対する個人的な評価は?
千野氏:当然、作家によって個性はあるが、全体的にみて「80後」の作家が発揮している時代的精神はそれほど豊かとは言えない。
Q:これらの作家の作品は、日本でどの程度受け入れられているのか?
千野氏:韓寒の「三重門」と郭敬明の「悲しみは逆流して河になる(悲傷逆流成河)」を除き、ほとんど紹介されていない。この世代の作家は日本ではほとんど人気がない。その理由の一つとして考えられるのは、例えば郭敬明の小説を見てもわかるように100%オリジナルの作品が少ない点だ。彼の「幻城」は、日本の漫画の模倣した作品であるため、日本の読者にとって新鮮味が無い。日本人にとってこのような類の小説はすでに読んだことがあるからだ。
また、張愛玲は中国では大変人気があるが、日本で彼女の作品はほとんど翻訳出版されていない。なぜならおそらく日本の文学作品には、もともと女性心理を事細かに描写した作品が多いからだろう。そのため日本の読者は彼女の作品から特に個性のようなものを感じることができない。
中国の「80後」作家が直面する現実は、日本の「80後」が直面する現実とは異なっている。中国人作家がやるべきことは、作品の中で、中国の現実にいかに向き合い、中国の若者の状態をどのように表現するかという点だが、この部分が十分に表現されていない。もし、この部分が十分に表現できれば、中国の「80後」作家は、必ず海外の読者を魅了することができると思う。