作者 井上正順
私は1992年、東京に生まれました。俗にいう“ゆとり世代”で、何かにつけて“ゆとり”と呼ばれながら今日まできました。中国では1990年以降に生まれた世代の人を“90後”と呼びますが、実は“ゆとり世代”と“90後”の時代的背景には多くの共通点があります。
例えば、日本の合計特殊出生率は、1990年代終盤、1桁前半にまで下降しました。そのため、総じて一人っ子です。中国も、一人っ子政策により大多数が一人っ子です。また、両国とも共働き世帯が多くなり、家族と過ごす時間は短くなりました。しかし、各家庭の生活水準は向上し、近年のグローバル化とともに、世界の様々な情報を身近に感じながら育ってきました。そんな“ゆとり世代”、“90後”の考え方や価値観は、他の世代と比べて大きな違いがあると言われています。
さて、私は18歳で北京語言大学に留学しました。中国語の学習歴はなく、ただ海外に飛び出したいという夢だけで中国へ渡りました。中国に対するイメージは可もなく不可もないところでしたが、中国人の友人たちとの交流を通して、新たな発見や、考えを一変する出来事がたくさんありました。
先ず、中国の友人たちが自分の意見をきちんと持っていることに驚きました。日本では「場の空気」が重んじられて思い通りの意見が言えないことが多々あります。ところが、中国は真逆です。自分の考えに従って行動し、大きな声で堂々と意見も言える。そんな友人たちは、じつに生気に満ち溢れています。
行動力があることにも驚かされました。私の接してきた中国人は主体的で行動的な人が多く、そのリーダーシップぶりには何度も感心させられました。
また、一番驚いたことは、彼らのストイックさです。どんなに多忙でも勤勉さを失わず、向上心旺盛なさまは、日本の若者に一番欠けていることだと強く思いました。
ところで、昨年の日中共同世論調査で、中国の若者が日本に対するイメージのマイナス傾向を改善しているのに対し、日本人全般が中国に対してネガティブなイメージを抱いているという結果が出ました。中国の“90後”の大半は、アニメ、マンガといった、日本のサブカルチャーを見て育ってきています。また、インターネットや貿易などの発達に伴い、日本の情報や日本製品に触れる機会が増加したため、日本に対してポジティブなイメージを抱く人が多くなりました。日本の場合、中国に対する情報にネガティブ要素が多く含まれていることが多く、マイナスイメージを作り出す大きな原因の1つだと強く思います。私たちは、報道の歪曲性や不公正さを指摘できたとしても個人で正すことは簡単なことではありません。
しかし、私は今後も、中国の友人・知人たちとの平和で明るく、希望に満ちた交流を続けたいと心から願っております。また、日中友好のために、私にできる最大の努力を続けたいとも考えています。
そのためには、やはり両国の若者が直接触れ合い、ひとり一人の絆を強めていく場をなるべく多く作るしかないと考えています。これまでに、日本国内外で日中交流のためのさまざまなイベントを企画・開催してきました。北京留学中は、日本人留学生会の代表として、月1回の日中交流会を定期的に開催し、中国語を学ぶ日本人留学生と、日本語を学ぶ中国人学生との交流の場を広げました。また、日中合同成人式や夏祭り等、日本文化を紹介するイベントの企画・運営に携わり、多くの若者に両国の相互理解を図る活動をしました。帰国後も“90後の会”(日本在住の“90後”日本人・中国人)が日中交流のプラットホームとなるようにと運営に携わっています。このような活動を通して実感したことが一つあります。それは人との出会いが次の出会いを生むということです。
私たちは、知らない相手に対して無意識に警戒するなど、ネガティブイメージを抱きがちです。それは悲しいことですが、改善の余地はあります。
先ず、両国の若者に向けた草の根交流を積極的に行い、1人でも多くの人に私たちの真の姿を理解してもらうことが重要です。規模や形態や様式は問わず、全てがこれからの日中友好に繋がる種になると信じ、草の根交流という名の種まきが活発化することが大切です。日中“90後”は、他の世代と違って、20年後、30年後の両国の関係を担う貴重な人材です。
今、大事なことは一人が立ち上がり、一歩を踏み出す勇気ではないでしょうか。そしてもっと大事なことは、何があってもその友好の流れを止めない、続けていくんだという日中双方の努力と歩み寄りです。
中国の諺にこんな一節があります。“喝水不忘挖井人”、です。私たち日中友好を志す者は、先陣を切って両国の友好という名の井戸を掘った人のことを忘れてはいけません。諸先輩に日々感謝し、これからも私たち90後が、友好という名の井戸を更に深く掘り下げ、平和の種がより開花していくように尽力していきます。
作者:井上正順 会社員(北京語言大学東京校入試広報課)
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2016年12月9日