1990年代より、日本で毎年10万人以上が失踪している。離婚、借金、失業、受験失敗など、生活で大小さまざまな恥をかいているからだ。彼らは自分を懲らしめることを決め、失踪事件を自作自演し、家庭と社会から「蒸発」している。米ニューヨーク・ポスト(電子版)が10日、伝えた。
「蒸発する人々」は日本の特殊な文化・社会環境により生まれた独特な現象だ。フランス人記者は5年間を費やし、自ら失踪した人々に接触し、彼らの声に耳を傾けた。
東京に隠された「失望の町」
記者は「人々が失踪できるのは、日本社会の下に別の社会があるからだ。彼らは失踪しても、別の生きる手段を見つけることができる」と話す。
失踪者たちは自ら作り出した「失望の町」で暮らしている。
「山谷」は日本の地図に記されていない場所だ。厳密に言えばここは町ではなく、東京都内のスラム街にすぎない。ここでは失踪を選択した人々が、日雇い労働で暮らしていくことができる。彼らは狭苦しく窓のない旅館に集まる。ネットがなく、トイレは共用で、午後6時以降は会話が禁じられる所もある。
「私はクズのよう、クズそのものだ」
徳宏さん(50)は山谷に長年身を潜めている。彼は人々から尊敬される技術者だったが、10年前のある日急に職を失い、恥にさいなまれるようになった。
恥ずかしく家族に失業したことを伝えられなかったため、当初は毎日出勤するふりをしていた。彼はいつものように早起きし、スーツを着用し、ネクタイを締め、鞄を持ち妻に「いってきます」と言っていた。ところが車でビルの下にやってくると、車の中で一日を過ごし、何も口にせず誰とも話をしなかった。このような日が一週間続き、家族に真相を知られる恐怖に耐えられなくなっていった。