訪日旅行をした中国人観光客が12日、微博(中国のツイッター)で、「東京のアパホテルの客室に同ホテルグループ代表の元谷外志雄氏が執筆した右翼書籍が置かれていた」と発表した。書籍は南京大虐殺や韓国の慰安婦の存在を否定するとともに、「いわゆる日本人が犯した罪は、アメリカが原子爆弾投下のために作られた嘘である」と記述している。本当にホテル客室に右翼の本が置かれていたのか。中韓観光客はこのことに抗議するべきなのか。「環球時報」の記者は12日、日本のアパホテルを独自取材し、この件について調べた。
アパホテルはアパグループの傘下ホテルで、創始者の元谷外志雄氏が代表を務める。その妻である元谷芙美子氏は社長を務める。同ホテルはチェーンホテルで、立地の良さや価格の安さなどで競争力を高め、日本人に人気があるだけでなく、中韓観光客の利用者も少なくない。2016年9月までに、建設中のホテルを含む計413軒のホテルがあり、総客室数は7万室に上る。日本メディアによると、旅行シーズンに外国人観光客の4割がアパホテルに泊まり、うち半数が中韓観光客で占められているという。
しかし、多数の観光客はこのホテルの「政治的背景」を知らない。その秘密は客室の机の引き出しに隠されている。そこにはホテル代表の元谷外志雄氏が書いた『誰も言えない国家論』や『誇れる祖国「日本」――日本復活の提言』など右翼書籍が置かれているのだ。上述の微博にコメントを発表した中国人観光客も、「多くの中国人がこのホテルに泊まるが、書籍が日本語と英語なので、このことに疑問を持つ人はほとんどいない」と述べている。
興味深いことに『誰も言えない国家論』は産経新聞出版社から出版されており、カバーには元谷外志雄氏と田母神俊雄氏のツーショットである。さらには「田母神ブームを作った男」と書かれている。2008年10月、アパグループは「第1回『真の近現代史観』懸賞論文」を創設した。そして当時の航空自衛隊幕僚長である田母神俊雄氏の「日本は侵略国家であったのか」が受賞した。同論文は侵略の歴史を否定しており、日本の戦争の罪を美化していたため、当時大騒ぎになった。同氏はその後、職を解かれた。航空自衛隊の上官の定年は通常60歳だが、田母神氏は当年11月に退職させられた。
「環球時報」の記者は12日、東京のアパホテルの1つに電話をかけ、フロントスタッフに問い合わせた。すると、確かに傘下ホテルのすべての客室の机の引き出しにこれらの書籍が置かれていることが分かった。宿泊客は自由に読むことができ、欲しいと思えば直接買うこともできる。しかし中韓観光客が買ったことはないし、彼らからの意見も出ていないとしている。「どうして右翼の書籍を置いているのか」と尋ねると、同スタッフは言葉を濁しながら「読んだことがなく、内容についてよくわかりません。それが右翼書籍なのかどうかも判断できません」と答えた。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2017年1月16日