――日本に着いたらどうだった?
日本に着いて、30万は確実というのは嘘に近いことがわかった。最初の一年の収入からいけば、3年で15万稼げればいい方だろう。当時、私が手にしていたのは北海道の最低時給の大体760円くらいだった。交際相手が見つかるとの夢想は一日目で消えた。私たち3人はあの広い土地で働く数少ない男性だったが、残りは皆、5、60歳の日本のおばさんばかりだった。
賃金収入は労働契約で約束として書き入れられず、中立的な機構が管理するわけでもないから、権益維持はほとんど不可能だ。
――それに対してどうするのか?
我慢できなくて途中で帰国する人もいる。コネや度胸のある人は「黒工」(不法就労)を始める。不法就労を始めることは「黒に走る」などとも呼ばれる。
ここ数年はレートも低く、実習生が不法就労に流れる状況もさらに頻繁となっている。北海道で2度目の長い冬を過ごし終え、更新したビザをもらってから、私も「黒に走」った。
――不法就労にはどんなリスクがある?
不法就労を始めれば、ニュースで出て来るような「失踪人口」になる。その前に仲介に渡した保証金が泡となってしまうだけでなく、いつでも国に送還されるリスクがある。
建築業は不法就労が比較的多い業種だ。私が日本で会った建築労働者は、10人のうち5、6人が不法就労だった。多くの場合、相手側は、こちら側が合法的な身分を持っていないということを知っていても、働き手を必要としているために、黙認して使ってくれる。偽の「在留カード」を見せるだけでいい。私は1000元で偽のカードを作った。
あとは住居だ。身分がないので、多くの場合は中国人から又借りする。そうすれば在留カードは必要ない。私に今部屋を貸しているのは台湾地区の同胞で、私とルームシェアをしているのはやはり不法就労者だ。
私たちは今、横浜の建築現場で塗装工をしている。仕事以外はめったに外出しない。医療保険もないので風邪をひいてもめったに薬を買いに行かないし、警察に目を付けられるのが怖いのだ。
私服警察がたくさんいる。人の多い駅の近くは特にそうだ。東京では5分も歩けば駅に当たる。外に出るとびくびくしてしまう。特別な取り締まりの時には、チャットのQQで、不法就労者が捕まったという情報が頻繁に入って来る。