日本最大の保守派メディア『読売新聞』は13日、「旭日旗」に政治的な意味合いはなく、現在の日本においては軍国主義を代表するものではなく、日本政府は屈服するべきではないとの記事を掲載し、大きな反響を呼んだ。「侵略の象徴」とみなされていた「旭日旗」の意味はいつの間に変わったのだろうか。
『読売新聞』がこの文章を発表したのは、日本の川崎フロンターレのサポーターが、アジアサッカー連盟(AFC)チャンピオンズリーグのグループリーグの韓国・水原三星との試合で「旭日旗」を掲げたことがきっかけだった。川崎フロンターレはAFCに、無観客試合1試合と罰金1万5千ドルの処罰を受けた。
「旭日旗」と日本国旗の「日章旗」はいずれも、19世紀後半の明治維新の時期に生まれた。「旭日旗」は、日本の伝統文化の中で、好運をもたらすとの意味を持っていた。1870年6月13日の明治政府による「明治3年太政官布告第355号」で、「旭日旗」は正式に日本陸軍の軍旗となった。1889年、「旭日旗」は日本海軍の軍旗ともなった。
第2次大戦中、日本軍は「旭日旗」を掲げ、アジア太平洋の戦場で破壊や殺害、略奪を繰り広げた。神風特攻隊が米軍の軍艦に突っ込む際にも「旭日旗」がかけられた。1945年8月15日に日本は無条件降伏を宣言し、「旭日旗」は使用禁止となった。だが1950年代、日本自衛隊は「旭日旗」の使用を始めた。陸上自衛隊の旗は16本の赤い線が8本となり、旗の周囲に黄色の縁が加えられた。海上自衛隊の旗は第2次大戦の時とほぼ変わっていない。
日本で長年生活している『環球時報』記者の見るところ、「旭日旗」やこれに似た図案は日本の日常生活ではほとんど見られず、普通の人は「旭日旗」に特に関心を持っていない。多くの国とは異なり、日本の都市の住民は、強い政治的な傾向がない限り、旗をかけるのは好まず、国旗の「日章旗」でさえあまりかけてはいない。京都の町に出現して物議をかもした「日本人でよかった」という広告も、日本人に国旗掲揚を呼びかけるものだった。
日本の民衆の反戦感情はまだ強い。自衛隊員の中に軍服で街を歩くことに慎重になる人がいるほどで、「旭日旗」を街で掲げるのはなおさら具合が悪い。
だが日本の右翼団体にとっては事情は違う。右翼の活動では、「旭日旗」がムードの盛り上げ役を務める。毎年8月15日の「終戦記念日」にはきまって、少数の右翼分子が「旭日旗」を掲げて靖国神社に参じる。一部の政治家は、「旭日旗」を利用して支持者に取り入ろうとする。
日本国内では多くの場合、あまり目立たない「旭日旗」だが、国際的な舞台ではしばしば話題になる。日本の川崎フロンターレと韓国の水原三星のAFCチャンピオンズリーグでの試合の際の問題もその一つだ。2014年には、男子サッカーワールドカップの日本チームのユニフォームに「旭日旗」の図案が隠れていると話題となった。
日本政府は早くから「旭日旗」のマイナスイメージの払拭をはかってきた。日本政府は2013年、「旭日旗」と「日章旗」はいずれも日本の象徴であり、同様の地位を持つのだと声明を発表している。
安倍晋三氏の2度目の首相就任後、日本は、集団的自衛権の解禁を核心とする新安保法を採択した。安倍首相は現在、改憲という宿願を実現するために積極的に動いている。今月初め、日本憲法施行70周年の記念日が到来した際、安倍首相は、改憲の意図を高らかに宣言した。「戦争発動権の放棄」を規定した憲法第9条を修正し、「自衛隊には違憲の可能性がある」との議論を終わりにし、2020年までに新憲法を実施しようというのだ。こうした背景の下、日本政府高官と保守派の大新聞が機会をみはからい「旭日旗」のマイナスイメージ払拭をはかるのは、まったく意外なことではない。
中国や韓国などの国を除けば、多くの国の民衆は「旭日旗」のことをほとんど知らない。米紙『ワシントン・ポスト』は、日本の「旭日旗」の使用継続が隣国で大きな歴史論争を引き起こしていると伝えている。だが米国や欧州で「旭日旗」のことを本当に知っている人は非常に少なく、一部の欧米人は、これが日本を代表するシンボルだと思いこんでいることもある。ただ欧米のメディアや学者の中には、日本のさまざまな動向を警戒をもって見守る人もいる。学者のアレクサンダー・ラッセルは英誌『ヴァーシティ』に寄せた文章で、日本国内で沸き起こる民族主義の波が持つ潜在的な破壊力を軽視してはならないと主張し、欧州でのポピュリズムの氾濫よりもさらに危険かもしれないと論じている。日本のあるアナリストは、日本で軍国主義の残滓が伸長しつつある中、「旭日旗」は、「教育勅語」や「銃剣道」と同様、日本の右翼勢力の新たな「招魂の鈴」となる可能性もあるとしている。
ドイツは、「旭日旗」と並ぶ侵略のシンボルであるナチスの鉤十字をどう扱ってきただろうか。ナチスの鉤十字と似た符号は、欧州でも好運を意味していた。だが第2次大戦はその意味を徹底的に変えた。ドイツは戦後、ナチスに関係するシンボルの使用を固く禁じ続けている。ドイツ刑法86条は、ドイツ国内でナチスのシンボルを見せた人に最高3年の懲役か罰金を科すことを規定している。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2017年5月25日