陳さんは小学生の頃からバイオリンを習っていたが、大学では広告学を専攻。しかし偶然のチャンスから陳さんは上海彩虹室内楽団の首席バイオリン奏者を務めることになった。陳さんは、「音楽ホールなどの正式な会場でクラシック音楽会を開催したことは多いが、みたところ、クラシック音楽は心から受け入れられ、好かれているわけではなく、観客との距離感があり、自分の生活とはあまり結びつきのないものだとみなされているようだ」と語った。
多くの楽団がオフィスビル、キャンパス、コミュニティでクラシック音楽を演奏し、クラシック音楽の普及やアピールを行っているが、その効果はほとんどない。陳さんは、その原因について、「多くの普及活動は一貫性のない構成内容で、今週はクラシック、翌週は京劇といった形。これでは物珍しさを期待する観客しかやって来ない」と分析している。
陳さんは伝道師のように堅苦しい理屈を語るスタイルでクラシック音楽を普及させるやり方を望んでいない。音楽会を魅力的なものにプロデュースし、観客を魅了し、自ら進んでその魅力に触れたいと思わせたいという思いが陳さんのこの仕事における原動力となっている。
そんな経緯を経て、「山澤カルテット」と音楽会「成人法則」が生まれた。
従来の音楽会とは異なり、この音楽会はテーマや曲目も全て人気ドラマ「カルテット」の曲を採用したため、自然と話題となり注目を集めることとなった。会場の内装・デザイン、会場の選択、観客の体験において、この音楽会は従来の概念を覆している。音楽会の会場は芸術的な雰囲気にあふれており、ステージと観客席には境界がなく、観客は姿勢を正して座る必要がなく、自由に立ったり、座ったり、写真撮影したりすることができ、奏者と観客が楽しめる最高の雰囲気を整えている。
また、演奏時間を調整して曲を選んでおり、「従来のクラシック音楽会では演奏時間が長い楽曲が多く、一楽章だけで10分以上もあり、楽章の合間に拍手をすることもできず、現代人の美的感覚に合っていない」と陳さん。そのため、音楽会「成人法則」では同ドラマで使われた演奏時間の短い楽曲を採用している。その後、陳さんたちは楽曲選定でさらに大胆な挑戦をしており、従来のやり方から逸脱し、京劇やヒップホップ、電子音楽など、ジャンルにとらわれずにさまざまな楽曲を演奏し、心地よい音色のメロディを追求している。