中日の書の違い
日本では小学3年生から毛筆による「書写」の講義が始まる。講義では手本を参考に、止めやはね、はらいに注意し、半紙いっぱいに漢字やひらがなを書く。
一方中国では、これまで書道は必須科目ではなかったため、書法学学科に入学する学生は習い事や受験対策専門の塾などで筆の使い方を身に付けることが多いという。古典通り忠実に文字を書く練習を積んでいるため、その面では長けているが、受験対策の為に詰め込み学習をしている学生が多く、文字を大きく書き、細部に及び研究をする事には不慣れだ。作品を出展する際に縮こまらずにのびのびとした線質の文字を書いて欲しいと言う願いから、大きな紙に少字数の文字を書くことを宿題とした。すると、生徒たちの文字は徐々に大きく生き生きとした線質になった上、書道の腕も上達した。
大学の講義以外で、庄村さんは日本人の主婦や子ども向けの「書のお稽古」をする教室も開いている。参加する生徒は、せっかく中国にいるので中国の書道を学びたいという人や、日本のかな書道や篆刻を学びたい人など、その理由も様々だ。
幼稚園から高校まで書道を習っていた生徒のなほさんは、「書道は何も考えず、心を落ち着かせて没頭することができる趣味であり、なくてはならない生活の一部」と話す。
庄村さんの作品と花道作品とのコラボレーション
日本のヴィジュアル系ロックバンド「DEAD END」のイベントTシャツには、庄村さんが手がけた「四鬼夜行」の文字が入っている
庄村さんにとっての書の魅力
書の魅力について、「書とは、紙に言葉を書く文学芸術。文学的根拠のある文字を、芸術性を持ち、人の心に響くようなものを作る。そして、それを見る人が、そこから何かを感じ取ってくれたら、そこには人と人のつながりが生まれる」と語る。そうした思いを実際に表現するため、庄村さんは、音楽アーティストや、著名な花道家とのコラボレーションを行っている。ジャンルを超えた「アーティスト」たちが、互いを引き立て、それぞれ単体では出すことのできない新たな魅力を引き出すことができた瞬間の達成感が大きいのだという。
こうして中国に来たことで、日本では実現が難しかったことをいくつも実現させ、夢が広がった庄村さん。今後は、「日本や日本の書道に興味があり、留学を考えている中国人学生たちに、より多くの選択肢を与えたい」と考えている。(洪東実)
「人民網日本語版」2017年8月1日