東南アジアでの影響力拡大という強い意志に促され、日本は近年、ベトナムを仲間にしようとの取り組みをますます強めつつある。2012年末の第2次政権発足後、安倍首相が選んだ最初の外遊先はベトナムだった。安倍首相は今年も同国を2度訪れている。経済的な投入も全力で進められている。今年1月から11月までの統計によると、日本の対ベトナム直接投資は世界最大の89億ドルにのぼっている。
日本が示すこの好意は報われているようだ。米ピュー研究所の調査によると、日本に好感を持つというベトナム人は82%にのぼった。『環球時報』記者による最近のベトナムでの取材によると、ベトナム人の日常生活は、さまざまな日本企業の広告や日本文化の要素、日本援助のプロジェクトであふれている。日本の「触角」はすでに、インドシナ半島にあるこの国の隅々にまで伸びているようだ。
文化――ハノイ「リトルトーキョー」で聞いた日本への賛美
ベトナムの首都ハノイのカウザイ地区を初めて訪れた人は、ここは果たしてベトナムなのか、それともパラレルワールドの日本なのかという錯覚にとらわれてしまうに違いない。日本語の看板を出した寿司屋や鍋料理屋、居酒屋がいたるところにあり、桜の花や灯籠などの「和」の要素が散りばめられている。ハノイの市街地の大抵の場所とは異なり、ここでは広々とした道路や高いビルが目立つ。道路標識がベトナム語であることだけが、まだハノイにいることを思い出させている。
『環球時報』記者は冬の夕方、カウザイ区チャンタイトン通り付近にやって来た。ちょうど明かりの灯る時刻で、飲食店が次々とドアを開き、その夜最初の客を迎え始めているところだった。まずは「備長炭焼肉」と名付けられた和食店に入り、従業員の雄さんとお喋りを始めた。「日本料理を好きだというベトナム人は最近、ますます増えている。この小さな店でも一晩に3、40人は来る」。この従業員は、カウザイ区に多くの和食店があるわけをこう説明してくれた。二十歳そこそこのこの男性従業員は、自分も和食が好きで、優雅で新鮮な日本文化にも惹かれているという。日本という国に対しては、「美しい、善良、責任感がある」という3つの印象を持っている。
「日本文化は今、ベトナムでとても流行している。日本文化と自国の文化がとても近いと感じるからかもしれない。とにかく日本はトレンドだ」。この従業員は『環球時報』記者にそう語った。店内を見渡すと、この焼肉店は隅々まで日本式の内装が施されていることがわかった。暖かい黄色の照明、木製の床、壁にかかった和服のデザイン。テーブルについたベトナム人客らはこうした環境を満足気に楽しんでいる。
「備長炭焼肉」の向かいには日本式の鍋料理屋があった。桜の花の背景で飾られたこの店の責任者の行さんに話を聞いた。「最高」。日本とその飲食文化について聞くと、彼女は『環球時報』記者にそう連呼し、陶醉した表情を浮かべた。この女性によると、つい10年ほど前まで、ハノイには和食店はあまり見当たらなかった。だが現在では和食店は増え、日本人もますます多くなり、「どこにでも歩いている」ようになった。デパートやショッピングセンターの日本語の案内も増えた。
「日本人はきれい好きで、礼儀正しく、頭が良く、付き合いやすい」。彼女の日本への賛辞は止まらない。「日本に留学したいという人はますます増えている。多くの子どもが日本語を学びたがっている。うちの息子もその一人で、大きくなったら日本に住みたいと言っている。私もソニーの大ファン。家のテレビやエアコン、冷蔵庫はどれも日本製をそろえている」
日本文化がベトナムで流行している裏には、日本政府と民間組織の強力な後押しがある。ベトナムで取材した何人かが『環球時報』記者に語ったところによると、日本はベトナムの大都市で「日本文化祭」のような活動をしばしば開いている。今年11月初めにも、在ホーチミン日本国総領事館がベトナム側と協力し、カントー市で「第3回越日文化・経済交流祭」を開いた。また今年9月に、日越友好議員連盟特別顧問の武部勤氏がベトナムを訪れた際には、来年1月にホーチミン市で大型の越日文化イベントを開催する計画が打ち出された。このイベントでは約3万人のベトナム人来場者が見込まれている。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2017年12月8日