「Japanese Cooking: A Simple Art」の内容は詳しく、正確で、全面的であり、調理ガイドであると同時に、最良の参考書でもある。寒天や木の芽(香りと装飾用のサンショウの若葉)、三つ葉(パセリの仲間)などあまり知られていない食材も詳しく紹介されている。豆腐の品質をどうやって知るかが4ページにわたって書かれ、31ページは「焼き物」に、10ページは「煮物」に割かれている。
焼き鳥や天ぷらなど有名な品も扱われているが、ほとんどのレシピは、西洋では見られないものばかりだ。はまぐりのバター焼き、アワビの酒蒸し、焼ききのこのポン酢和え、たたき牛蒡の胡麻和えなどいかにもおいしいそうなメニューは残念ながら西洋で口にする機会はない。これらの美食は用意するのに時間も根気も要る。例えば「タコの柔らか煮」は、食感を柔らかくするために大根おろしでもみ、蒸してから8時間置かなければならない。
辻静雄がこの本を書いたのは、豊かな日本の伝統料理を保存し、共有し、ほめたたえるためだった。本が出版されてから、日本料理を取り巻く環境は変わった。日本の飲食の知名度はすでに確かなものとなり、英国で刺し身が「野蛮すれすれ」とみなされることもなくなった。市場調査によると、5分の1の英国人の成人が日本食を楽しんでいる。2013年、和食は国連の無形文化遺産に登録された。だが辻のこの大作は今でも、日本料理を西洋がいかに知らないかを思い出させると同時に、そうした傾向の変化させようとする魅力的な招待状となっている。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2018年6月7日