日韓はいずれも先進国で、文化的に儒教の伝統的な影響を受けているため、高齢者が安らかに晩年を送れる国と想像しがちだが、実際にはそうではない。日韓と中国の高齢者の暮らしを比較すれば、次のことが分かるだろう。中国の高齢者が定年退職しているころ、日韓の高齢者は働いている。中国の高齢者が広場で集団ダンスを踊っているころ、日韓の高齢者は働いている。中国の高齢者が孫の世話をしているころ、日韓の高齢者はまだ仕事をしている。日本はさらに、定年の存在しない高齢化社会を作るというスローガンを掲げている。
日韓では定年退職後も安らかに晩年を送れず、自力で介護をするような高齢者が増えているのはなぜだろうか。高齢者の就職はまず個人の需要であり、年金では支出を賄えないか、介護サービスを受けることができない。韓国では高齢者の深刻な貧困のため、平均で71歳まで仕事を続ける。統計データによると、韓国の60歳以上の高齢者が毎月受け取る年金は人民元換算で平均約2000元と、最低生活保障基準の3分の1未満となっている。韓国は先進国のうち、高齢者の貧困が最も深刻な国になっている。長生きするほど相対的貧困になりやすいというパラドックスが存在する。経済協力開発機構(OECD)の推算によると、韓国の65歳以上の高齢者の48.7%が相対的貧困(所得が同国の所得分布中央値の50%を下回る状態)となっている。韓国の65歳以上の人口が総人口に占める割合は2015年に12.8%に達しており、さらに2060年には41%という恐ろしい数値に達する。
もう一つは社会の需要で、少子化により労働力が不足している。これは少子高齢化における年齢層のバランスの乱れだ。低出生率と少子化により若い世代の数が減り続け、高齢者を労働市場に戻す必要性が高くなる。日本の65歳以上の高齢者が総人口に占める割合は2016年に22.8%に達している。日本の建築現場で働く労働者の約3分の1が55歳以上だ。若い労働力を導入するため、日本は厳しい移民政策を緩和しようとしている。さらに日本の新規起業者のうち約3分の1が60歳以上の高齢者だ。30年前のこの数値は8%のみ。
日韓の定年後も仕事を続ける現象は、人口の安定的かつ均衡の取れた持続可能な発展を、重要な社会の目標とする必要性を示している。「制度的退職」が年齢を基準とするならば、「機能的退職」は能力を基準とする。健康な高齢化は、この「機能的退職」を支える。しかしどのような退職であっても無期限で延長できない。80代、さらには90代の高齢者に仕事を続けさせるのは非現実的だ。低出生率、少子化、労働力減少、高齢化を背景とする人口ピラミッドの反転は、非常に危険な人口動向だ。生産年齢人口が減少し、負担となる高齢者が増えるからだ。人口の年齢層のバランスが乱れることで、高齢者の世話をしてくれる頼りになる人がいないといった、多くの社会問題が生じる。出生率の上昇と少子化の抑制が、新時代の人口戦略の歴史的使命となる。(筆者・穆光宗 北京大学人口研究所教授)
「中国網日本語版(チャイナネット)」2018年7月29日