2020年の五輪開催地に東京が選ばれた際、実は「リサイクル経済」が大きく貢献したことはあまり知られていないかもしれない。瞭望東方周刊が報じた。(文・陳言、メディア関係者、日本問題専門家)
日本は五輪開催地に立候補した際、リサイクル金属を原材料に金銀銅メダルを製作するプロジェクトを提示した。20年東京五輪では、合わせて約5000個のメダルが必要で、それに使われる金属は8トン。それほど多くのメダルを全てリサイクル金属を使って作るというのは、「環境に配慮したコンパクトな五輪」という、日本が打ち出した五輪理念にもマッチしており、東京が開催地に選ばれる要因の一つとなった。
日本がこのような大胆なプロジェクトを提示することができたのは、その背後に強大な「リサイクル経済」という後ろ盾があるからだ。日本では1980年代にはすでに「都市鉱山」という概念が生まれていた。それは都市でゴミとして大量に廃棄される家電製品などの中に存在する鉄や銅など有用な資源を鉱山に見立て、リサイクルしようという概念だ。
現在にいたっては家電以外にも、携帯電話などの精密機器を用いた電子製品も回収され、貴金属、特に金や銀を取り出してリサイクルし、五輪のメダルというような意義のある物品を作り出すこともできるようになっている。
日本では、携帯のリサイクルはとても簡単なことで、携帯ショップなどに行くと、無料で回収してくれる。東京都庁舎にも、携帯回収ボックスが設置されており、携帯電話のほか、デジタルカメラや充電器、モバイルバッテリーなどもそこに入れることができる。また、日本は、携帯のリサイクルを行うにあたって、個人情報が流出しないように厳格なルールも制定されている。
日本の業界団体「電気通信事業者協会」(TCA)と「情報通信ネットワーク産業協会」(CIAJ)が共同で実施した調査によると、日本では毎年、約700万台の携帯電話が回収されており、そこから、金や銀、銅、アルミ、マンガン、パラジウムなどが取り出されており、「都市鉱山」がまさに「金の生る木」となっている。
日本の「リサイクル経済」において重要な位置を占めるもう一つの部分は、電池のリサイクル、特に電気自動車に使われるバッテリーのリサイクルだ。
日本の自動車業界は世界でも最先端を歩んでおり、電気自動車時代の到来も前倒しで訪れたため、日本の自動車メーカーも速やかに戦略を調整することができた。例えば、以前は電気自動車にずっと消極的だったトヨタだが、30年に電気自動車の販売550万台を目指す目標を掲げた。これは30年の生産総数の半分を占める台数だ。つまり、日本のバッテリーリサイクルは今後、巨大な産業になりうることを意味している。
電気自動車に搭載されているバッテリーは、日常生活で使われている電池と異なり、使用效率が70%以下となると、交換が必要になる。つまり、一度の充電で初めは300キロ走行できたものの、時が経ち一度の充電で200キロほどしか走行できなくなると、交換が必要になるということだ。交換して残った古い電池のほうは、風力発電などにもうしばらく使うことができる。そして、バッテリーに完全に電気を充電できなくなると、リサイクルに回されることになる。
しかし、リサイクルのプロセスが複雑であるため、バッテリーを回収する企業は、バッテリーのメーカーとは異なる。その分野を担うのが、三菱マテリアルや住友金属などの非鉄金属精錬メーカーだ。また、日本政府の関連当局も全ての過程を監督、指導し、業界基準も制定している。
日本と同様、中国も家電や電子製品の消費大国だ。そして2018年から、電気自動車が急速に普及するにつれ、中国でもバッテリーリサイクルの需要が急激に高まるだろう。日本の「リサイクル経済」を研究し、それに学ぶことは、中国の持続可能な発展に非常に役に立つに違いない。(編集KN)
「人民網日本語版」2018年9月29日