再三延期された「日米貿易協定交渉」が16日、ワシントンで始まった。双方は「交渉範囲」「目標」「日程表」などについて協議した。ところが日米の意見はなかなか一致せず、難航が予想される。
日米は初の会合で各自の主張を掲げ、意見が一致しなかった。例えば米国側は先に交渉範囲を確定し、法的拘束力を持つ一連の協定を求めようとしたが、日本側は現在の「物品貿易協定」を堅持した。米国側は通貨安競争を制限する「為替条項」を加えようとしたが、日本は歴史的な通貨をめぐる戦いを続け断固反対した。米国側は全面的な経済関係協定について協議し、戦略的な奥行きを持たせようとしたが、日本は便宜的措置により自動車への追加関税を回避しようとした。
日米貿易協定交渉の範囲、議題、日程表などの議論は事実上、交渉の主導権の争奪を反映している。貿易交渉における主導権とは単純に実力によって左右されるのではなく、「交渉の原本」が往々にして重要な力を発揮する。つまり何を交渉するか、どのように交渉するか、最終的にどのような形式で合意に至るのか、ということだ。米国は先に範囲を決め、農業やサービスなど一連の自由貿易協定(FTA)の締結を主張した。ムニューシン財務長官は、日米貿易問題や両国の経済関係などの幅広い議題を網羅しなければならないと強調した。日本は自動車や農業などの物品問題のみに限定するよう主張し、弱みを握らせず日本企業の競争力を確保しようとした。
交渉を米国にとって有利な方向に発展させるため、米国の農務長官と財務長官が交渉前に発言し、外から圧力をかけた。農務長官は農産物の関税協定を先に締結することで、TPP11と日欧EPAの発効による米国の農産物の競争力低下を相殺するよう主張した。財務長官は「為替条項」を加えることを強調した。トランプ大統領による貿易戦争について日本が最も懸念しているのは、米国が米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の「為替条項」及び「数量制限条項」、さらには「労働者基準条項」を援用することだ。特に金融危機から10年が過ぎ、米日欧の量的緩和が終了の問題に直面するなか、円高はそれに伴う副産物になる恐れがある。いかに過度な円高を防ぐかについては、日本政府の政策が試される。同時に米国も過度なドル高をいかに正すかという問題に直面している。相手国を制限する「為替条項」は、米国が通貨の覇権を行使するゴーサインを出す。
最後に、日程表をどのように計画するかは、交渉のペースに関わる。日本は速戦即決を求め、余計な問題の発生を回避しようとしている。ところが昨年9月に二国間交渉が決まった後も交渉が実施されなかったことは、米国の「貿易の戦後レジーム」における日本の優先順位と地位が下がっていることを反映した。米国も早期合意により来年の大統領選を迎えようとしていたが、中国との交渉が終わらないまま大統領選を控え日本と急いで貿易協定を結べば、より広範な利益の需要を満たせなくなる。またTPPという過去の例を参考にすると、選挙前に協定を結ぶよりは、選挙中に全面的な交渉の勢いを強めるほうがいい。そのため今回の交渉が最終的に日米貿易協定交渉の序章に格上げされるかについては、今後の交渉の動向を見守る必要がある。(筆者・劉軍紅 中国現代国際関係研究院研究員)
「中国網日本語版(チャイナネット)」2019年4月16日