リチウム電池の生産はかつて日本の得意分野だったが、今は中国・韓国企業の台頭が世界的に注目されている。10日付日本経済新聞は2019年のノーベル化学賞を受賞した日本人科学者、吉野彰氏のインタビューを掲載した。この「充電できる世界」をつくった科学者は、自身の観点について語った。
吉野氏はスマホ及び電気自動車(EV)に使用されるリチウム電池の開発者、旭化成の名誉フェローだ。これまでも無数の受賞歴があり、「未来を再定義した人物」と称されている。
日本はかつてリチウム電池の研究・生産分野で世界に先駆け、高いシェアを占めていた。ところが今や日本の科学技術力とイノベーション力が低下しているという観点もある。これについて吉野氏は、日本の大学の研究は転換期を迎えており、企業の研究も以前と異なると指摘した。基礎研究については、「10個中1個成功すれば良いほう」であり、予算が削減されているという。吉野氏は現状を打破するためには、どこで使われるのかを気にせず、自分の好奇心に基づき新たな物事を必死に発見しようとすることが重要であり、同時に真に役立つ研究をしなければならないと述べた。「この2つの研究が2つの車輪として積極的に回転するのが理想的な状態だ」
吉野氏は受賞後のインタビューで、日本の産業は「(消費者に即した)川下が弱い」と述べた。しかしバッテリーは川下ではなく中流に位置する。バッテリー業界のみならず、世界全体の産業変化により中流が絶えず失われている。川下と川上の直接的な結びつきが成功モデルになっている。中流の一部が活力を失っているのは、やむなきことだ。「川下は(米国のグーグルやアップルなどの)GAFAの世界であり、厳しい環境だが、(日本も)積極的に行動しなければならない」
リチウム電池市場で中国と韓国が台頭しているが、日本はいかに対応すべきかについて、吉野氏は「リチウム電池そのものについては確かにそうだ。日本は昔、携帯電話やパソコンなどに強かった。日本でリチウム電池が作られたのも合理的だ。今や携帯電話とパソコンは海外にシフトしている。日本の企業が依然として存在していても、中国で生産を行っている。わざわざ日本でバッテリーを製造するのはおかしなことで、これは仕方がない」と述べた。
吉野氏は、日本はリチウム電池用の隔離層や正極・負極などの事業で力を維持していると判断した。「(消費者に即した)川下を制することができれば最も理想的であるが、中核技術を把握すればいいというのも一つの考えだ」
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2019年10月14日