日米仏豪は11-17日にかけて東中国海で合同軍事演習を行い、広く注目を集めた。(筆者・項昊宇中国国際問題研究院アジア太平洋研究所客員研究員)
今回の軍事演習は、次の3点が異例だった。
(一)ハイグレードの装備。4カ国海軍は11隻の軍艦、1隻の潜水艦、数十機の輸送機と哨戒機を出動させた。特に日仏米が派遣した主力艦「いせ」「トネール」「ニューオリンズ」は、いずれもヘリコプターの発着艦が可能な1万トン級准空母だ。また日米仏はさらに計220人の精鋭海軍陸戦部隊を出動させた。
(二)顕著な狙い。今回の演習場は日本の九州及び付近の東中国海の海域で、日本の本州から中国大陸及び台湾島まで直線距離で最も近い地域で、釣魚島から1000キロしか離れていない。演習は「離島奪還」のテーマをめぐり、主に上陸作戦訓練を行った。陸海空多兵種共同作戦を強調し、ヘリによる強襲、市街戦、上陸作戦の訓練を重点的に行なった。
(三)欧州の大国の加入。フランスの艦隊が遠路はるばる訪れ、初めて日本の本州と東中国海における軍事演習に参加した。仏軍事省の報道官は、今回の合同軍事演習は「フランスのインド太平洋地域への関心の程度、日本との協力関係掘り下げの機会を確認した」と述べた。
新型コロナウイルスが世界で猛威を振るうなか、4カ国は大々的な軍事演習を行ったが、これが対外的に不安な情報を発したことは間違いない。まず、4カ国の軍事演習は中日の領土係争、さらには台湾海峡危機に軍事的に介入する危険な探りであり、地域の衝突と軍事対抗のリスクを拡大しうる。領土保全は中国の核心的利益に関わり、探りであっても本当に軍事行動を計画しているとしても、中国の核心的利益のレッドラインに触れるならば、それがどの国であっても慎重に考慮しなければならない。4カ国は腹の中でこれをよく理解しているはずだ。
次に、欧州諸国がいわゆる「インド太平洋」問題に介入することで、アジア太平洋地域の安全環境をより複雑にする。バイデン政権の発足後、米国は同盟関係の修復に取り組んでいる。アジアの同盟国も極力迎合し、米国の対中競争・けん制の戦略的需要に積極的に協力している。米国のアジア太平洋と大西洋を跨ぐ2大同盟体制は、「インド太平洋協力」を利用し中国周辺で合流の流れを見せている。「インド太平洋のNATO化」「NATOのインド太平洋への浸透」の動きが同時に活発化している。
周知の通り、NATOは米国の主導下の軍事集団であり、現在もゼロサムの冷戦思考にしがみついている。トランプ政権の後期に、米国の国内でも「インド太平洋版NATO」を作るべきと騒ぐ声があった。地域諸国からの疑問を受け、米日などの国は「インド太平洋協力」は特定の国を念頭に置かず、「インド太平洋版NATO」を構築するつもりはないと称している。ところがその一方では実際の行動により、価値観を基準とし地域で食い違い・対立を極力引き起こし、地域諸国を中国対抗に抱き込んでいる。
時代が変われば社会も変わる。欧州諸国は、今日の世界はすでに冷戦時代ではなく、今日の中国もかつてのソ連ではなく、米国を覇権を争うことが中国の政策の選択肢ではないことを理解するべきだ。冷戦終了後、アジア太平洋諸国は平和で安定的な地域環境のおかげで、グローバル化の分業・協力により繁栄と発展を実現した。平和的に付き合い、協力し、ウィンウィンを実現することは、アジア太平洋諸国に共通する願いだ。地域諸国を抱き込み対中競争・けん制を展開する米日の戦略は人心を得ない。「中国の脅威」の喧伝を通じ中国の発展をけん制しようとしても、奮起し強くなろうとする中国人の闘志をさらに引き出すばかりだ。
米国とその同盟国が「インド太平洋戦略」を弄び、中国をけん制しようと騒ぎ立てているが、中国は国の主権と領土保全を断固守った上で、相違点を残しつつ共通点を求める、開放・包摂・協力・ウィンウィンの精神を堅持する。大国の責任を積極的に果たし、食い違いのコントロールに取り組み、協力を促進し、地域の安定と繁栄の局面を守る。一部の国による中国けん制戦略は自ずと瓦解する。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2021年5月19日