波乱の中、日本が選挙シーズンを迎えている。この政情不安が中日関係のさらなる悪化を招くかについては注目に値する。少なくとも2020年の春・夏から現在にかけて、日本の政情は両国関係の持続的な揺れと低迷の重要な原因となっている。これは主に、与党・自民党内の保守右翼及びタカ派勢力が中日間の政治の共通認識及び相互信頼の基礎に絶えず揺さぶりをかけ、二国間関係について広範かつ積極的に干渉し、破壊していることに示されている。中日関係の発展が日本側の政情及び政局に苦しめられるのは、もはや最近に始まったことではない。(筆者・呉懐中 中国社会科学院日本研究所副所長)
右翼とタカ派が勢力を強める
日本の政界はこれまでも時折、中日関係に関する不協和音を発していたが、自民党内の某勢力の最近のネガティブな言行はすでに限界ラインを大幅に突破している。大まかに振り返っても次の通りだ。「民主」と「人権」を口実に香港・新疆関連などの議題をめぐり中国の内政を中傷し干渉している。高圧的に台湾問題に手出しをしており、最近のその典型的な動向は自民党と台湾民進党の外務・防衛会合(2プラス2)だ。領土・海洋権益及び国家安全などの二国間の食い違いを喧伝し、特に中国の「海警法」をめぐり中国への強硬な措置を煽っている。経済安全保障を口実に、党内及び党を跨ぐ多くの議員連盟を発足し、中日の経済・貿易交流を妨げている。新型コロナウイルスの起源解明を口実とし、中国を中傷している。
国際的な政治環境、特に米国の日本抱き込みによる中国けん制、日本国内の世論の雰囲気などが、自民党の某勢力が対中関係で強硬な姿勢を示すよう誘っていることは否めない。その他にも非常に明らかなのは、日本の政情がこの対中強硬の気炎を上げていることだ。
安倍政権は党内をコントロールする比較的強い力を持っていた。「一強」の地位に「右をもって右を制す」が加わり、右翼もしくは強硬派をほぼ制御し、中国への態度が極めて複雑な国内の政界を把握できていた。後継者である菅義偉氏は無派閥で、その就任は党内の派閥争いと妥協の結果だ。首相就任以降、党と政治の両面に弱く、コントロールの力が弱いといった弱点を露呈し、党内外の右翼とタカ派の勢力が強くなった。
菅氏は首相就任時に、安定的な中日関係を構築すると再三表明していたが、結果的には中日関係はこの1年で大きく後退した。菅氏は実務的な政治家で個性が強くなく、系統的な対外戦略及び外交の経験もない。中日関係が任期内にこれほど悪化したのは、菅氏が弱い党総裁・首相で、党内外で強い力を握る新旧の保守・右翼勢力の要求に迎合する必要があったからだ。外交及び安全政策の主導権の一部を譲渡する代わりに、政権への支持と追従を手にした。
中日関係に「標準の変化」
日本の選挙をめぐる駆け引きが白熱化し、勝敗を決していないが、少なくとも次の3点が中日関係の不確実性を招く恐れがあることが分かる。
(一)誰が当選しても短命の可能性が高く、後継者も政権運営の基盤が脆いという難題に直面する。一種の法則的な現象であるが、長期政権後の日本の政局は往々にして、首相が頻繁に交代する波乱の時期を迎える。これは政策の一貫性の不足、政令の統合及び意思決定の成果の問題を招きやすく、対外関係の混乱と災いが生じる。2010年と12年に日本が中日関係に影響を及ぼした「船衝突」及び「島購入」の処理がそうだ。
(二)「嫌中」「反中」「抗中」が日本国内のポリコレになろうとしている。未来の新リーダーは政権を維持するため保守右翼及びタカ派の勢力に迎合する可能性がある。その制御を受け、言いなりになることは避けがたく、抜本的で斬新な対中政策に期待できない。
(三)すべての立候補者が「リスク」と「病」を抱えている。中年もしくは若手の政治家を代表する立候補者は、親米保守と中国対抗が基調となっている。本人が温和的で穏健であっても、現在の雰囲気で票集めをするためには、中国に強硬な姿勢を示さなければならない。
そのため日本の政情及びその変化は、中日関係により多くの直接的な衝撃と恣意的な干渉をもたらしている。日本側も中国側の気持ちや抗議により自制しなくなった。これは実際には現在の中日関係の「標準の変化」の現れだ。すなわち日本の内政の要素により、双方の基本的な接触方法もしくは関係の標準に重大な変化が生じている。これまで中国側が慣れていた取り組み方は、この時代の日本側の政治家との接触もしくは二国間関係の処理にそれほど適さなくなった可能性がある。
それと関連し、今後の中日関係に影響を及ぼす、次の日本側の2つの政情の変化に注意が必要だ。
(一)予見できる今後の一定期間に渡り、自民党の指導層は党内の不健全な勢力による中日関係への撹乱と損害を抑える能力もしくは意欲を持たない可能性が高い。かつての自民党の領袖は異なり、基本的に対中関係において軽はずみが過ぎる者を抑え込むことができたが、今や指導層の自浄作用及び抑止力が完全に失われている。
(二)自民党の二階俊博幹事長が「下剋上」により退任を迫られる可能性があるが、今回の選挙をめぐる駆け引きは「親中派」の低迷と非主流化の加速を促す。日本の対中温和派もしくは穏健派の政治的役割及び存在感が全面的に薄れており、中日間の効果的な意思疎通ルート及びハイレベルの人脈関係をより沈滞させる。これはまた、日本の対中意思決定勢力の版図にあった一定のバランスが打破され、回復できないネガティブな変化が生じることを意味する。
改善に転じることこそが中日関係の正解
現在、日本国内の政治の右傾化及び世論の対中強硬化がなおも強まっている。日本の現在の政治的な雰囲気には、中日関係を理性的かつ穏やかに議論する余地がほとんどなく、そのため対中新路線を形成する内外の条件が欠けている。けん制と警戒の方針の下、米国の扇動と影響を受け、日本は中国に対して絶えず限界ラインを踏み、無謀で過激になっている。ポスト菅時代の中日関係は、消極的な流れがさらに強まり、改善の余地が限定的で、重大な転換点は現れないとされている。また日本の体制の欠陥もこの流れを助長している。「無責任な中枢」は日本の独特な政治文化及び体質の特性とされている。つまり事態が悪い方に向かっていることを知りながら、自分を捨てて決断を下し、身を挺して極力挽回しようとする人がいない。政治家らは好機到来すれば挑戦しようとするが、まずいことになったと思えば途中で止める。あるいは潮時を見て切り上げようとする。
このような状況下、自民党から高度な戦略的視野と政治の知恵を持つ政治家の登場が待たれる。ところが四方を見渡しても、このような「大人物」は見つからないようだ。安倍氏であっても大きな「機会主義者」に近いようだ。公理や正義を求め、守ろうとするよりも、「情勢に迫られて」だ。日本の政治エリート及び戦略界の関係者は、中国けん制のことばかりで思案に暮れている。ところが適度なバランスの取れた戦略を保つ収益よりも、敵意のない隣の大国への過度なけん制が最終的に自身に招く損失の方がはるかに大きいだろう。世界の歴史における大国の悲劇は、すでにこれを雄弁に証明している。
自民党の指導層は1972年以降の中日関係の歴史の歩みにおいて、何度も正しい選択をした。これが両国の根本的な利益に合致することは実践によって証明された。菅政権の後半に中日関係は事実上袋小路に入ったが、日本の政権交代は理論上、関係をリセットするチャンスをもたらした。両国関係は現状を維持するのか、低迷の一途をたどるのか、それとも低迷を止め安定を求め、これを改善に転じるのだろうか。後者が難しいことは間違いないが、唯一の正解だ。閉幕したばかりの東京五輪の開催期間中、中日双方に黙契と善意がなかったわけではない。日本側もさまざまなルートから北京東京五輪の開催に協力すると表明した。来年は中日国交正常化50周年だ。日本側が政権交代を契機とし、正しい道を歩みながら革新に臨み、中日関係の好転と健全かつ安定的な発展を促すことを願う。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2021年9月8日