文=ジャーナリスト 木村知義
まず、習近平総書記の報告(以下「報告」)を読んで、「中国の現在(いま)」と現代の社会主義について深く考えることになった。その考える営みを通して、この「報告」は今の中国を知るための最良の「教科書」だという感慨を強く抱いた。
「報告」の全体を貫くのは、1949年に新中国、中華人民共和国が成立して以来の歩みが新たな歴史段階に入ったという時代認識である。
とりわけこの10年、「党と人民の事業に重要な現実的意義と深遠な歴史的意義を持つ三つの大きな出来事を経験した」として、中国共産党創立百周年を迎えたこと、中国の特色ある社会主義が新時代に入ったこと、「貧困脱却堅塁攻略と小康社会の全面的完成」という歴史的任務を完遂して「一つ目の百周年の奮闘目標」を達成したことを挙げ、この10年がどのような歴史的意義を持つのかを明確にした。同時に「人類史上最大規模となる貧困脱却堅塁攻略戦に勝利し、絶対的貧困の問題が歴史的解決」に至ったことが「グローバルな貧困削減事業に大きく貢献した」と、視界を大きく世界に広げて、国内の取り組みとグローバルな課題が深くつながるものとして意義を確認していることも重要だ。
全体を貫く論理のもう一つは「人民主体」ということだ。中国の社会主義の依って立つ原点は、人民に依拠し、人民に奉仕すること、すべては人民主体に考えて実践することにあるということを繰り返し語りかけていて、深く胸に響く。
世界注視の「台湾問題」について、中国の依って立つ原則があらためて鮮明に示された。すなわち、基本は平和的統一にあり、外勢が介入したり「台湾独立」といった邪(よこしま)な動きをしたりさえしなければ、台湾の人々と一体となって統一を果たせるという、まさに「百年の計」があらためて明確に語られていることも忘れてはならない。
また、産業、経済からテクノロジー、文化、生態系、更に人材育成などあらゆる分野、領域を一体と位置付けて、「質の高い発展」をめざすことが提起されている。これらはすべて中国の特色ある社会主義の内実を具体的に示すものであり、中国式現代化の本質をなすものだと言えるだろう。
「報告」の最後で、若者たちへの熱いメッセージが語られていることも注目すべきものだ。すでに中国が「豊か」になり始めたころに生を享けた若者たちに向けて、中国革命と中国の社会主義の原点をあらためて示し、思想、哲学にまで深めて、青年たちこそが中国の未来を創るのだということを強く訴えている。
このように、今回の政治報告は、新たな段階に歩みを進める中国を牽引する中国共産党の依って立つ思想と政策が精緻に語られていて、歴史を俯瞰して言えば、マルクスによって提起されて以来いまだに誰も実現していない現代の社会主義建設にむけて、すなわち、前人未到の目標に向けての歴史的「号砲」となっていると言える。
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