日本の岸田文雄首相は豪州を訪問し、アルバニージー豪首相と「新安全協定」に署名した。軍事、情報、サイバー、宇宙、法執行などの協力を全面的に協力するほか、両国の人員が相手国を訪問し合同訓練を行えるようにした。これは年初の「円滑化協定」に続く日豪の「準同盟」関係のさらなる強化だ。
豪州にとって、豪日関係は「ANZUS条約」の水準に近づいている。日本はすでに豪州を、米国に次ぐ緊密な安全パートナーとしている。重視すべきは、日米安全関係の急速な強化が単独的な現象でないことだ。米日の最近のアジア太平洋における一連の軍事安全活動と結びつけると、米国主導の「新ファイブアイズ」が徐々に形成されていることが分かる。
米日は来月10日より沖縄周辺海域で隔年開催の合同演習「キーンソード」を実施する。両国間で最大規模の実戦訓練として、日米は2万6000人・1万人の兵力、数十隻の艦艇、数百機の軍機を派遣する。特に注意すべきは、今回は英国、豪州、カナダの艦艇と軍機も参加することだ。さらに英豪加は最近、日本との軍事安全交流に非常に意欲的だ。日英は5月に「円滑化協定」に署名し、二国間関係を「準同盟」に格上げした。カナダ外相が10月中旬に訪日した際に、両国は軍事情報を共有する「情報保護協定」に向けた調整を開始することで合意した。
さまざまな動きは、地政学及び大国の競争という考えに支配される新ファイブアイズが、冷戦を背景とする宗教・信仰・価値観を元に形成された伝統的なファイブアイズに取って代わる可能性があることを示している。
周知の通り、英米加豪NZという英語圏5カ国で作るファイブアイズは情報共有組織で、米国が世界的な覇権を維持するための中核的小グループとされてきた。米国の世界戦略の重心が「インド太平洋」にシフトし、中国を最も主要な「戦略的競争相手」とするに伴い、大国の競争への対応が近年徐々にファイブアイズの重要な職能になっている。その連携・協力範囲も情報から5G、サイバーセキュリティ、新疆・香港関連などの議題に拡大している。ファイブアイズのモデル転換は米国の国際的な動員力を高めたが、その内在的な限界も日増しに露呈している。そこで米英の国内からは2つの意見が出ている。まず、米国の「インド太平洋戦略」における日本の重要な役割を鑑み、日本を受け入れ「シックスアイズ」に拡大する。次に、NZの規模と影響力が不十分で、かつNZが「中国けん制」にためらっており、ファイブアイズの中国に対する共同対処の効果を弱めている。
日本はファイブアイズに憧れている。与党・自民党は2020年末の「経済安保戦略」の策定に向けた提言の中で、日本はファイブアイズに加盟すべきと明確に主張した。日本とカナダが情報保護協定に署名すれば、日米英豪加は初歩的な情報共有ネットワークを構築することになる。政治的意向は強いが、日本がファイブアイズに加盟するためには多くの技術的問題がある。これは主に日本国憲法が、政府による公民の情報の取得を制限しており、また日本国内の情報体制及び情報収集能力に不備があるためだ。さらに国内の民意の反発により、日本がファイブアイズに加盟するための条件は短期的に備わっていない。
将来的に新たな多国間連盟が誕生するかはさておき、米日英豪加のアジア太平洋における軍事安全交流は、米国の中核的な同盟国がその「インド太平洋」指揮棒に振られ「再結集」することを意味し、地政学的な影響を過小評価できない。
米国の「インド太平洋」安全連盟が徐々に再構築されていることに目を向けるべきだ。バイデン政権発足後の「インド太平洋」構造において、米英豪の安全保障枠組み「オーカス」は最も中心的な部分とされている。ところが核不拡散の敏感な議題に関わるため、世界的に批判を浴びるばかりか、米国の同盟体制内部でも大きな物議を醸している。伝統的なファイブアイズは代表性がなく、機能が単一的であるため、重責を担えない。現在の米国の世界戦略の全体構造から見ると、バイデン政権はアジア太平洋と大西洋を跨ぐ2大同盟体制の「インド太平洋」地域における合流に取り組んでいる。将来的に米日英豪加でつくる新ファイブアイズが、米国の「インド太平洋戦略」の中で中核的な役割を演じる可能性を否定できない。
また5カ国の安全協力の強化の基礎が堅固でないことにも注意すべきだ。米日の軍事関係の強化、日豪の安全協力の掘り下げはいずれも、「共同で中国に対抗」という戦略的な狙いを隠していない。しかしこの大国の競争の論理に基づく、軍事対抗を強調する小グループの協力は、平和と協力という地域諸国の共通の願いに背いている。しかも各加盟国の需要の差もその脆弱性を決めており、5カ国の中国をめぐる利益は一致しない。協力の掘り下げに伴い、相互の利益をめぐる主張の食い違いが顕在化する。時代の流れに背く新ファイブアイズの長期運用が困難であることも認識すべきだ。(筆者・項昊宇 中国国際問題研究院アジア太平洋研究所客員研究員)
「中国網日本語版(チャイナネット)」2022年10月24日