寺田稔総務大臣の辞任により、わずか1カ月で岸田内閣の閣僚3人が更迭された。また岸田内閣の支持率も低下を続け、政権運営の基盤が揺らいでいる。日本の政界に新たな変動が生じようとしている。
岸田文雄首相の政権運営に黄色信号が灯ったことには、4つの理由があると分析されている。まずは民意を無視した国葬の強行、次に低迷する景気、それから政権運営における優柔不断な態度、最後にお友達の起用による民意の怒りだ。
苦しい局面を打開するため、岸田政権は総額71兆6000億円にのぼる総合経済対策を打ち出し、巨額の財政補助により物価高を抑え、国民生活の圧力を和らげ、民意の支持を集めようとした。対外的にはG20やAPECなどの国際舞台を利用し、中国・米国・欧州の大国との交流により外交の手腕をアピールしようとした。また国内の不満をそらすため、岸田氏はさらに右翼・保守勢力に積極的に迎合し、いわゆる「外部の安全の脅威」を喧伝し国民の危機意識を煽り、「自主防衛」能力の強化などのポピュリズムの政策に力を入れている。しかし岸田氏の自民党内における求心力の低下や、防衛政策の調整などの重大問題をめぐる連立与党の公明党との大きな温度差により、政権運営の基盤が不安定になっている。これは岸田氏の今後の政権運営の大きな妨げになる。
戦後の日本の政治史を振り返ると、岸田氏の現状は多くの前任者の縮図、つまり「揺るぎなき自民党、ころころ変わる首相」でしかない。ただ首相を交代しただけでは日本の政界の根深い問題を解消できない。日本国内には以前から「政治的劣化」という説があり、その矛先は「派閥政治」「密室政治」「長老政治」「世襲政治」などの政治文化における悪習に向けられている。しかしより深いレベルで見ると、日本の政界における混乱の常態化は、日本という国の発展の苦境を反映している。
日本の政界は現在、保守勢力が主導権を握っている。自民一強の基本構造がしっかり固定されてしまい、大きな保守政党が大多数の議席を占めている。「55年体制」の下、保守勢力と実力が拮抗していた左翼革新勢力がほぼ消滅している。これは社会レベルの反戦・平和主義思想の大きな後退を反映している。外交面では、日本の政治家は「反中・嫌韓」などのポピュリズムの思想を煽り、これに迎合することで、争うようにして対外的に強気の姿勢を示している。与野党は外交・防衛問題をめぐり多元的に議論しておらず、ほぼ全員が改憲と強軍、日米同盟の強化を主張している。日本の周辺外交の苦しい局面のについては、建設的な政策の主張がない。この対外戦略は浅はか、頑迷で、日本の政治を狭隘な民族・保守主義の袋小路に導いている。
バブル崩壊後の「失われた30年」を経た日本は現在、空前絶後の少子高齢化の危機に直面している。国の借金が膨らみ、潜在的な経済成長率は0.5%未満だ。大幅な円安により、世界3位の経済大国としての地位も危ぶまれている。日本の国民は力強いリーダーが国力を取り戻すことに期待している。ところが旧態依然の政治環境のせいで、国の変革を根本的に促し、膠着した対外戦略の思想を変化させられなければ、誰が首相になっても日本を発展の苦境から脱却させることは困難だろう。(筆者・項昊宇 中国国際問題研究院アジア太平洋研究所客員研究員)
「中国網日本語版(チャイナネット)」2022年11月24日