文=張詩奡 南京大学中国南中国海研究協同創新センター特任研究員補佐
日本が2021年4月に福島核汚染水海洋放出案を閣議決定してからすでに2年が経過している。この2年間で、日本政府による間違った決定の是正、その他のより低リスクな案の検討の試み、国際社会との誠意ある実務的な意思疎通と支援要請は見られなかった。近年事あるごとに「海洋国際法治」「ルールに基づく国際秩序」と称していた日本政府は、各国の安全と利益に切実なリスクをもたらす核汚染水排出案について、耳を覆って鈴を盗むような詭弁を吐いている。言行不一致とダブルスタンダードは科学を弄び、法律を侮辱している。
この詭弁は「科学基準に合致すれば安全であり合法」に分かりやすく示されている。ところがそのいわゆる科学基準は核汚染水の放出がもたらす環境問題を払拭できず、法規から逃れるための免罪符にもならない。
日本政府が意思決定プロセスにおいて用いた「科学基準」は、国際放射線防護委員会(ICRP)の技術提案によるものだ。ところがこれはいわゆる「多核種除去設備(ALPS)」の信頼性と有効性を証明できず、またこれほど多くの核種の大規模かつ長期的な放出の環境に対する安全性の評価にも適用されず、さらには有機トリチウムが食物連鎖に入ることによる人体の健康と安全性への潜在的な脅威を否定できない。日本政府の「科学基準」の運用は偏っており、間違っている。
日本はICRPの技術提案を利用し排出案の合法性を弁護しているが、これは合法性という概念のすり替えだ。1950年代に米国の物理学者のローリストン・テイラーは、放射線防護は単純な科学技術の問題ではなく、哲学や道徳、及び最大の知恵の問題であり、経済・政治・文化・法律などすべての範囲の要素に関わると述べた。放射線防護の環境安全問題について、「技術上の限界値」は法的な正義とイコールで結ばれない。
国際環境法を見ると、科学的な不確実性が存在するリスクについて、国際社会では徐々に「リスク予防の原則」もしくは「リスク予防方法」による活動の展開が認められてきた。核汚染水の解決策について、日本政府は最も慎重な態度によりリスクが最も少ない案を選択し、最適化された緊急対応案を練り上げるべきだ。ところが現実において、日本政府と東京電力は環境影響評価手続きを完了する前に、核汚染水海洋放出の方針を採用した。
国際海洋法を見ると、「国連海洋法条約」は、各国が汚染リスクへの対応レベルで国際協力を展開するための具体的な形式を規定していないが、これは各国に広い裁量権を与え危機に柔軟に対応できるようにするためであり、悪意を持ち法的義務から逃れるための余地を残すためではない。ところが日本政府の対応を見ると、条約が締約国の海洋環境保護のために設定した果たすべき義務をわざと無視し、適当にあしらう傲慢な態度を周辺諸国に示している。
国際的な核関連の法律を見ると、ICRPの提案と国際原子力機関(IAEA)のソフトロー文書はいずれも、一国が核活動を展開する際にまず経済・文化を含むすべての非科学技術要素の「リスク・リターン」分析を行うことで、活動の「正当性」を証明するよう求めている。ところが日本政府は意思決定プロセスにおいて、日本国民、特に福島県周辺の漁師の利益を斟酌せず、また未来の世代が直面するリスクを考慮せず、周辺諸国の海洋環境の安全に配慮しなかった。
核汚染水開放放出という日本側の一方的な決定は、自国の私利のために全人類の共同の利益を損ねる行為だ。本質的に日本政府は各国の人々に対して、日本と共に科学の実験に参加するよう威圧している。実験失敗の結果は日本国民を含む各国の人々が共に受け入れる。この意思決定は科学を弄び、法律を侮辱しており、日本政府の道徳の赤字と知恵の苦境を浮き彫りにしている。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2023年6月26日