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日中韓首脳会談再開は「政融経強」関係への第一歩

人民中国  |  2024-06-03

日中韓首脳会談再開は「政融経強」関係への第一歩。

タグ:首脳会談

発信時間:2024-06-03 09:16:18 | チャイナネット | 編集者にメールを送る

立教大学前総長、立教大学経済研究所長 郭洋春(談)

 日中韓首脳会談が4年ぶりに開催された。日本では3カ国の関係についてしばしば「政冷経熱」という言葉を使うが、今の3カ国の関係は「政対経強」ではないかと私は思っている。政治は「米中摩擦」に引きずられ緊張する場面が増えている。一方、経済関係は日本・韓国とも貿易相手国の1位は中国だ。中国から見ても、日本・韓国はそれぞれ第2、第3位の貿易相手国となっている。従って、それぞれの国の経済発展にとって、3カ国の経済的な結び付きは必要不可分なのだが、政治的な構造によって、経済も政治同様あたかも競合しているかのような印象が発信されている気がする。

 その雪解けのためのファーストステップが、今回の日中韓首脳会談だったと私は考えている。今回の首脳会談は経済関係が主な議題にはなっているが、実際にサプライチェーンなどの経済関係がより一層強固になっていけば、もはや競い合う意味が薄らぎ、いずれは政治も含めた信頼構築にもつながる。それは現在の「政対経強」関係から「政融経強」関係、つまり政治は融和し、経済は競合から協力関係に進展し、経済協力以上に政治的環境改善への第一歩となることが、今回の首脳会談の隠された成果意義だったと私は考えている。

 3カ国に恩恵をもたらす自由貿易

 首脳会談で、3カ国は自由貿易協定(FTA)実現に向けた交渉を加速することで一致した。自由貿易協定といえば、2020年に地域的な包括的経済連携(RCEP)が締結され、初めて日中韓3カ国が入った自由貿易協定の枠組みとなった。当初日本はRCEPに対してやや否定的だったが、実際にスタートしてみたら、締結までには確執があったものの、発効1年後の国別利用率は輸出入とも日本が最多で、中国や韓国以上に多くの恩恵を受けることとなった。人口5000万しかない韓国が今後も経済発展していこうと考えたとき、地理的に近くて最も経済成長の潜在力が高い国の一つである中国との関係はもはや無視できないということが、RCEPを通じて理解できたのだろう。自由貿易協定の恩恵が想像以上に大きいことが分かり、より踏み込んだ議論をする場としてFTAが浮上したのだろうと思う。

 現在の世界経済、特に日中韓が置かれている状況を考えれば、デジタル経済やグリーン経済がSDGsと相まって最も重要な成長戦略になるだろう。3カ国がデジタルやグリーンで経済協力を結ぶFTAができるならば、おそらく世界に先駆けたロールモデルとなり、世界に先駆けた主導的な協定になると思われる。

 これに加え、デジタル方面では情報通信技術(ICT)を生かした人工知能(AI)、さらにはAIを活用したデジタルトランスフォーメーション(DX)やグリーントランスフォーメーション(GX)を用い3カ国、あるいはRCEPを通じた協力を作っていく。最も進んでいる国の一つである中国、半導体でかなり影響力を持つ韓国、技術では力を持っている日本が協力をしていくならば、3カ国ともにAI大国、DX大国になっていくだろう。その枠組みづくりは非常に画期的かつユニークな取り組みだと私は思う。

 「生産能力過剰論」は的外れな批判

 「中国生産能力過剰」は、経済学者の私から見ると非常に不思議な、的外れな批判だ。

 現在米国が進めているグローバリゼーションや市場開放などは新古典経済学的な政策であり、完全自由競争の下で経済を活性化させようというもので、一時的に需要と供給のバランスが崩れても、いずれは一致するという考え方だ。しかし世界中に自由競争を呼び掛けた当の米国は、中国がその恩恵を受け始めると、生産過剰と批判し始めた。

 資本主義における過剰生産は至極当たり前のことで、それが好況を生んだり、あるいは縮小生産でデフレを生んだりと、好況と不況の波を繰り返しながら経済が発展していくものだ。例えば米国が同じように過剰生産をしたら、おそらく米国は自らの国際競争力の強さだと言うだろう。中国がそれをしたがゆえに、非常に感情的に、ヒステリックに対応しているだけだ。もし本当にそれをおかしいと思うならば、米国が進めたグローバリゼーションそのものが間違っているということで、まず責められるべきは米国だろう。

 これは90年代の日米貿易摩擦を彷彿とさせる。当時、日本の対米輸出によって米国の対日貿易赤字が非常に拡大した。米国の自動車産業の国際競争力の低下を問題にするのではなく、日本による意図的なダンピングによる不正価格とみなし、それに対抗するために日本に輸出自主規制と米国産牛肉とオレンジの輸入枠撤廃を提示した。

 今回その手が中国に対してできないがゆえに、過剰生産を理由に叩いている。米国は常に自らが抱えている問題点を見ることなく、問題を相手に押し付けることをしてきた。私から言わせれば、競争社会における敗者が自分たちの努力不足を棚に上げて一方的に相手を叩くのは、それこそ公正な貿易関係を阻害する行為だ。

 確かに中国が生産力を高めているのは事実かもしれないが、それが過剰であれば最終的にはその弊害は中国にも必ず跳ね返ってくる。もし中国が跳ね返ってくることを想定しながら作っているのであれば、それはまだ過剰生産ではなくて、それを欲している国と地域があるということだ。例えば中南米、中東、アフリカなどには、太陽電池などが足りない国はまだまだ多い。そこに売ることには何ら問題はないはずだし、そこをターゲットにして生産能力を高めても同様のはずだ。

 「中国脅威論」をあおるための「債務のわな」

 中国はすでに150カ国・32の国際機関と200件余りの「一帯一路」協力文書に署名している。これだけの巨大な国が集まって署名をするというのは、参加国や国際機関の「一帯一路」に対する期待は相当大きいと考えられる。問題は、日本ではそうした実情がほとんど取り上げられず、ネガティブな報道ばかりが流れてくる。最も強いのが「一帯一路」は中国のためのものだという批判だが、果たしてそれが本当なのかというとそんなことは決してない。日本の経済産業省も2022年版の通商白書で、「『一帯一路』構想は中国のインフラ整備に伴う過剰生産の輸出先として沿線国を利用しているわけではない」と明言している。従って、「一帯一路」は中国のためのものという主張はそもそも当てはまらないし、そもそもこれだけ巨大なプロジェクトを一国にしか恩恵を与えないということ自体があり得ない。共同建設国には当然人が通り、モノが通り、お金が通る。波及効果を想像するのは簡単だ。

 「債務のわな」についても全く同じだ。中国の融資政策が貸し付けで債務国を縛り付けているというなら、日本の政府開発援助(ODA)もほとんどが貸し付けを行っているが、それは債務のわなと呼ばれていない。スリランカを例にすれば、最もスリランカにお金を貸しているのは国際通貨基金(IMF)だ。ということは、「債務のわな」を最も行っているのは中国ではなくてIMFではないか。「債務のわな」という言葉を使っているのは、やはり「中国脅威論」をあおるための方便としか思えない。

(李一凡=聞き手・構成)

 「人民中国インターネット版」2024年6月3日

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