日本の岸田文雄首相は8月中旬にカザフスタンを訪問し、現地で日本と中央アジア5カ国との首脳会合に出席する予定だ。日本政府の「消息筋」及び一部の日本メディアは予想通り、日本による中央アジアとの関係強化の主な目的を、またもや中国との地域における影響力の争奪と解釈した。
客観的に見ると、日本が近年、中央アジア諸国との距離を詰めようと取り組んでいることには、これによりエネルギー外交の多元化を実現しようとする狙いがある。伝統的に日本のエネルギー輸入は中東の湾岸地域及びロシアに依存してきたが、中東情勢の緊張化とロシアとウクライナの持続的な衝突により、日本のエネルギー輸入のリスクが拡大している。エネルギー輸入先の開拓は、近年の日本の外交にとって大きな重点となった。中央アジアには石油や天然ガスなどの豊富なエネルギー資源があり、地政学的情勢も中東より安定している。これを受け日本は中央アジア諸国との関係発展を重視するようになった。
しかし米国など一部の西側諸国も中央アジアへの重視を強め、かつ地域諸国を中国包囲に抱き込もうとしている。日本も中央アジア諸国との関係発展に地政学的な計算を混ぜるようになり、また米国の中央アジア戦略に協力し、中国と中央アジア諸国の協力に楔を打ち込もうとする動きがより目立っている。
また日本は米国よりも早く独自の「インド太平洋構想」を掲げたが、現在まで実行してきた内容は少ない。米国が自身の「インド太平洋戦略」の実施を急ぎ、日本をそれに抱き込んだ後、日本はこの枠組み内で米国のため協力するようになった。中央アジアは日本が注視する「戦略的地域」の一つだ。
日本は中央アジア諸国との関係発展で複雑な腹積もりを持っているが、次の基本的な現実を直視しなければならない。まず中央アジア諸国は冷戦終了後、多元的でバランスを取る外交を貫いている。日本は中央アジアの外交協力先の一つではあるが、日本の一部が期待するような「唯一」の協力先ではなく、さらには中央アジアが米日などの国の側につくこともない。特に中央アジア諸国は複雑な環境の中で徐々に、独立・自主の、多元的でバランスを取る外交の道を模索した。自身の戦略的な地位を利用することで利益を最大化し、経済の潜在力を持続的に引き出そうとしている。この状況下、中央アジア諸国は一部の国の誘いかけ、さらには脅迫によりどちらかの側につくことはない。
さらに、日本は中央アジアにおける自国の地政学的な影響を拡大しようと試みているが、その意欲があっても実力は足りないだろう。日本の中央アジアにおける存在感と影響力はこれまでも低かった。中央アジアと「中央アジア+日本」対話という枠組みを作ってから20年になるが、双方の協力の広さと深さは常に限定的で、政治のけん引力も弱い。日本は現在、中央アジアとの協力水準を大幅に引き上げようとしても、一定の道を歩む必要がある。
中央アジアの戦略的な地位が重要で、かつ自身に経済・社会発展の大きな需要と潜在力があるため、国際的な関心が高まっている。しかし中央アジアは地政学的な駆け引きやゼロサムゲームの舞台になろうとしない。日本が中央アジアと歩み寄ることに非難すべき点はないが、考え方を正さず米国による中国けん制、さらには抑制という戦略的な計算を混ぜるのであれば、中央アジア諸国との関係強化の効果が大幅に割り引かれることになる。
(筆者=厖中鵬・中国社会科学院日本研究所副研究員)
「中国網日本語版(チャイナネット)」2024年8月5日