日本は世界で唯一、マフィアを合法的に認めている国である。高度経済成長期には、一般市民とは無関係のところで様々なヤクザが興隆した。ところが経済低迷が続く近年、ヤクザたちは生き伸びるために再び街へ戻り、市民の生命や財産を脅かすようになった。日本社会はヤクザ組織に寛容的ではなくなり、政府に対処を強く求めるようになっている。
そのため日本政府は「暴力団排除条例」を制定した。条例には具体的な罰則が設けられ、2010年4月、福岡県を皮切りに実施された。その後、各都道府県で実施されることになった。
福岡県が皮切りとなった「暴力団排除条例」が実施されてから、すでに3年。一時10万人を超えていた日本のヤクザ組織は、2012年には6万人を下回り、統計以来最低の水準となった。日本社会は、彼らにとってますます住みにくいものとなっている。「やっとのことで出所したと思ったら、環境が大きく変化していた。メシの一食も食えないとはたまげたよ」。昨年に10年間の刑期を終えたばかりの、殺傷事件を起こして刑務所に入っていたヤクザのボスが厳しい表情でつぶやいた。「オレはヤクザだが、普通の友だちもいるし、家族はヤクザと関係ない。でも今では喫茶店でお茶を飲むことすら彼らから拒まれるようになった」。
「暴力団排除条例」は一般市民とヤクザ構成員の交流を制限しているだけではない。企業が経済活動のために契約行為をする際にも、相手が暴力団組織ではないことを確認する条項を入れなければならなくなった。出所したばかりのヤクザのボスはこの社会環境の変化を見て、「車も買えず、部屋も借りられず、銀行口座も作れなくなるとは夢にも思わなかった。にっちもさっちもいかないよ」と嘆く。