中国のスマホを使った電子決済サービスの市場規模は今年、前年から3割強増え12兆5000億元に達した。世界最大規模になった中国の「スマホ決済圏」は、訪日中国人が増える日本にも広がる。
この便利な決済サービスの簡易型は小規模店舗でも導入しやすく、普及すれば日本のスマホ決済の多様化につながる。
中国で一般的な簡易型は、スマホの画面に表示されるQRコードを店頭のタブレットにかざすか、店側が事前に準備しておいたQRコードを読み取った後、金額を入力し決済を完了できる。「スイカ」といった専用読み取り機を使う日本で主流の方式に比べると設置コストが少なく、小規模店舗や個人でも導入しやすい。
中国ではクレジットカードによる支払いは少ない。利用額がすぐに銀行口座から引き落とされるデビットカードが直接普及していた。最近は使いやすさや信頼性の高さ、店舗での導入のしやすさから簡易型のスマホ決済が急増している。日本では現金以外の決済手段のうち、クレジットカードの市場規模が最大となっている。
中国の調査会社「比達咨詢」によると、スマホなどの移動端末を使った決済市場は2015年に9兆3000億元にのぼり、2017年は15兆元に増える見通し。米スマホ決済大手「スクエア」は2015年の決済処理額が、人民元換算で約2390億元。金額で単純な比較はできないが、中国の市場規模は群を抜いている。
電子商取引大手アリババの「支付宝」のシェアがトップで、騰訊控股(テンセント)の「微信支付」が続く。スマホによる決済に慣れた中国人が大挙して日本を訪れ消費するようになり、両社は日本での扱い店舗を拡大している。
テンセントは2016年中に扱い店舗を1万店にする方針。狙いは訪日時の利用だけではなく、日本企業が帰国後も中国人旅行者を「常連客」にできるようにしている。日本企業は日本でスマホ決済した中国人に対して、帰国後もネット経由で新商品や割引の情報を紹介。通販で直接購入できるようになる。これまで主流だった「銀聯カード」より便利な決済サービスといえる。
日本企業も動き始めた。高島屋は日本橋店や新宿店など大型店で、支付宝や微信支付を利用できるようにした。販売単価は下がっているが、高島屋は「客数は今後も伸びる」とみて、利便性を高めて集客する。
コンビニのローソンは羽田空港などの9店舗で支付宝を導入。セブン-イレブンも首都圏の数十店舗で試験導入した。ファミリーマートは4店舗で導入を決定した。
今後、日本のスマホ決済の手段が広がりそうだ。ベンチャー企業のオリガミが始めた読み取り機を使わない決済システムを、大手衣料品チェーンが導入した。
リクルートライフスタイルは支付宝とLINEペイに対応したアプリを提供しており、ユナイテッドアローズや那覇空港の店舗で使用できる。導入のハードルが高かった小型店で普及が進めば、スマホ決済がより身近になる可能性がある。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2016年8月31日