スモッグの主要汚染物である硫黄などを含む排気ガスは人体に影響を及ぼす。天津大学によると、同校の国家傑出青年科学基金(The National Science Fund for Distinguished Young Scholars)取得者である楊全紅教授研究チームは、硫化水素と二酸化硫黄を水中での分散性に優れたナノ硫黄粒子に急速に「エコ化」することに成功した。この粒子は電極材料や機能性セパレータとして、電気自動車において応用が期待されるリチウム硫黄電池の機能を持つという。「廃棄物を宝に変える」というこの思考は、大気汚染改善や新エネルギーパーツの発展を融合したもの。同研究論文はエネルギー分野で有名な定期刊行物『Nano Energy』最新号で発表される。
超高エネルギー密度のリチウム硫黄電池は未来の電気自動車のパーツ発展において重要な方向の1つであり、プラスの活性物質である硫黄はエネルギー備蓄の重大な役割を果たす。伝統的な処理方法の制限を打破するため、廃棄物に含まれる硫黄をリチウム硫黄電池に利用できる活性物質に変えることは、汚染改善と新エネルギー技術開発を合わせた大きなイノベーションとなる。
楊全紅教授は『科技日報』の取材に対し次のように話した。研究チームは2013年に大気汚染物を新エネルギーパーツに変える研究を開始し、これまでの実験で硫黄水素と二酸化硫黄がリチウム硫黄電池において「エネルギー棒」の役目を果たせることがわかった。研究チームは基礎科学反応の理論をもとに、水を反応媒質とし、硫黄水素と二酸化硫黄を酸化させ、ナノ硫黄粒子と水だけにすることに成功した。このナノ硫黄は水中での分散性に優れている。
米アルゴンヌ国立研究所の電池専門家・陸俊教授は、「この画期的な取り組みは非常に優れた構想で、一挙両得である。ナノ硫黄粒子はリチウム硫黄電池の性能向上と産業化を推し進める役割を果たす」と述べた。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2017年10月21日