【臨界点に注意】
報告書は「臨界点」を引き起こしうる、気候の急激な悪化現象を列挙した。
(一)永久凍土の融解。ロシア、カナダ、欧州北部などの永久凍土内には、現在の排出量の15倍という大量のメタンガスとCO2が存在する。永久凍土が解けてこれらが大量に放出されれば、世界の温暖化を激化させる。気温上昇によりこれらの温室効果ガスの排出が加速するが、科学者はこれを「ポジティブフィードバック」効果と呼んでいる。
(二)森林が枯れる。報告書はある研究により導き出された結果を引用した。世界の気温が3度上がると、アマゾン川の熱帯雨林の4割の木のこずえが枯れるというのだ。これは次の世紀まで続く可能性がある。山火事がこの破壊を早める可能性もある。
(三)雪と氷の減少。極地、特に北極の氷河の面積が急速に縮小している。雪と氷の表面が太陽光を宇宙に反射するのとは異なり、解けてできた海水は太陽放射を吸収し、海水の水温上昇を引き起こす。これによって氷河がさらに解け、悪循環を形成する。報告書は、北極は今世紀中頃までに初の「氷なき夏」を迎えると予想している。世界の気温が2度上昇するならば、この状況は4年毎に生じる。
(四)海面の上昇。南極大陸西部とグリーンランドの大陸氷河及び雪原の温暖化の影響による融解のペースに関する科学者の予測は一致していないが、地球の気温が1−3度上がれば「臨界点」に達することでは意見を一致させている。この2大大陸氷河の融解により、海面が13メートル上昇し、人類社会は「滅亡の危機」に直面しうる。世界の3分の2の大都市、多くの耕作地の海抜が10メートル未満だからだ。
科学者は、これらの変化は相互に関連しており、ある「臨界点」が別の「臨界点」を生むと警告している。報告書の筆者の一人、ポツダム気候影響研究所のハンス・J・シェルンフーバー所長は「気温が2度上昇すると想定しても、この一連の変化は重大な災害をもたらしうる。地球全体が新たな運行モデルを迎える。気温が4−5度上がれば、地球環境の許容度は10億人まで低下する」と述べた。