迷子か
長期的にアジアゾウの観察・研究活動に従事している雲南大学生態・環境学院の陳明勇教授は「この季節はちょうど、森林のアジアゾウの食料の端境期だ。北に行くほど標高が上がり、森の食料が減少を続ける。そのためゾウの北上は不可思議だ」と述べた。
1頭の成年のメスがこの15頭のアジアゾウの群れを率いている。北上のルートはこのメスの経験によって決まる。専門家は、北上の理由は群れのリーダーの経験不足によるもので、迷子になり、シーサンパンナに戻る道が分からなくなった可能性があると推測した。
あるアジアゾウ観測作業員によると、ゾウは以前、農作物を食べるため出てこなかった。これは人々がさまざまな方法で追い払い、抑止効果を発揮していたからだ。「アジアゾウの保護が近年強化され、人から傷つけられないことを知り、徐々に畑に食料を探しに来るようになった」ゾウの性格の変化により活動範囲が拡大したことが、ゾウの群れの長距離移動の原因の一つかもしれない。
世界自然保護基金(WWF)の元首席専門家である范志勇氏は、「ゾウの食料源は長稈の草本植物だ。シーサンパンナ自然保護区の設立から長くなり、高く大きな喬木が育ち、樹下の草本植物が減少した。保護区内の草本植物が十分でなくなれば、ゾウの群れは保護区の端に移動する可能性がある」との見方を示した。
調査によると、中国のアジアゾウ(野生)の数は1980年の約170頭から現在の300頭前後に増加したが、生息地の面積は1976年の2084平方キロから近年の500平方キロ未満に縮小した。人類による大規模な鉄道や道路などのインフラ整備により、限りあるゾウの生存空間が細切れにされた。これはゾウの群れと群れの交流及び繁殖に不利だ。雨林で十分な食料を得られないアジアゾウは、危険を冒し徐々に森林の端に移動し、人類が暮らす村や畑で食料を探すしかない。
ゾウを誘導