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『物権法』が立退き紛争を変えた
発信時間: 2008-04-01 | チャイナネット

 

中国の不動産業の好景気が続く中、土地や建物の収用がひんぱんに行われるようになった。これに伴い、開発業者と権利者との紛争も多発している。立退きはもっともホットな話題の一つとなっているが、そのうち全国的に注目を浴びた事件が二つある。

一つは「史上最牛的釘子戸」(史上もっとも頑固な立退き拒否者)といわれた事件である。

3年前、重慶市九竜坡区で219平方メートルの二階建ての飲食店が商業ビル建設用地に指定された。しかし経営者の楊夫妻は、立退き補償金が市価とあまりに隔たっているとして、開発業者と対立した。

同地区の他の住民280戸はすべて立ち退いたが、楊夫妻だけは立ち退かなかった。工期を急いだ開発業者は、水道と電気を停め、楊さんの店の周囲は9メートルほどの深さに掘り下げられた。楊さんの飲食店はまさに陸の孤島になった。

開発業者側は人民法院に飲食店撤去の強制執行を申し立て、許可を受けた。しかし、楊夫妻は、断固として立退きを拒否し、3年にわたって居座り続けた。結局、今年4月、中国全土が注目する中、楊夫妻は補償金約400万元(約6100万円)で開発業者と和解した。

この解決は、『物権法』の成立によるところが大きいと考えられる。これまでは、一部の地方では、立退きに際して国家の利益、公共の利益、集団の利益が何よりも優先すべきとされ、個人財産の保護への配慮が足りなかった。今年3月、『物権法』が制定され、国家、集団、個人の財産は平等に保護するものとされた。この私有財産保護の法的保証は、画期的な変革である。

『物権法』は、権利者の権益保護を強化するために、公共の利益を目的とする場合を除き、集団所有の土地、企業・個人の建物や不動産を収用してはならない、と収用の目的を限定し、また、公共の利益のために収用を行う場合であっても、法により補償しなければならない、としている(42条)。

もう一つの事件は、深セン版の立退き拒否事件である。立退きを拒否した張さんは、一年以上にわたり協議を続けた結果、2007年9月末、1千万元以上の補償金を受け取ることで、和解が成立した。

重慶の事件と異なる点は、現地の人民法院が強制執行をせずに調停し、それが功を奏したことだ。これは明らかに、人民法院が『物権法』の趣旨を踏まえ、個人財産を平等に保護したことによるものであろう。またこれは中国が、法治国家に向かって大きく前進していることを示している。

立退きは、合意による立退きと収用による立退きの二つに大別される。法律的には、この二つの立退き拒否事件は、平等な当事者間の合意による立退きに該当することは明らかだ。こうした立退きは、契約自由の原則に基づいて、当事者間で契約を締結すべきである。

にもかかわらず現行の『都市家屋立退き管理条例』は、開発業者が契約を締結することなく政府主管機関から立退き許可を取得することができ、また、住民がそれに応じなければ、人民法院に強制執行を申し立てることも可能とされている。このため公権力の不当な介入こそ、立退き紛争の主な要因の一つと指摘されている。

このため中国建設部(建設省)は現在、『物権法』の趣旨に基づいて『都市家屋立退き管理条例』の改正を検討し始めたという。

この改正作業は、公共の利益の意義を明確化し、合意による立退きにおける政府機関の立場を公平・中立にし、収用手続を規範化することによって、公共の利益のための土地収用に際し、立退く人の十分な利益保護を実現するものとして期待されている。

「人民中国」より 2008年4月1日

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