中山大学香港・マカオ・珠江デルタ研究センター、同大社会学部の黎煕元・準教授は、広東省婦女連合会が開催した家庭問題学術シンポジウムで、「中国大陸部の大都市ではここ数年、海外(香港・マカオ・台湾を含む)での出産育児という新しいブームが密かに起こっている」と指摘した。深セン、広州、佛山3都市の海外(地域外)出産を経験した家庭を対象とした調査の結果、海外出産を目的とした中国人渡航者が最も多い訪問先は米国、地域外出産のトップは香港だった。専門家は「保護者は、住民に適用される公共福利や世間の評判を十分に考慮すると同時に、子供が本国に帰った時に再適応するために払わなければならない代価についても低く見積もるべきではない」と警告している。広州日報が伝えた。
黎副助教授の発言内容は以下の通り。
▽ブームの背景=一人っ子政策回避
中国大陸部の都市住民が、海外出産を選ぶ主な理由は、地域による関連制度・政策の差から生じる福利厚生の違いによる。
調査の結果、夫妻ともに大陸部出身の場合、海外出産で産まれた子供は軒並み第2子か第3子で、第1子は大陸部の戸籍を持っている。海外出産を選択する動機は明らかに、中国政府の一人っ子政策を回避することだ。また、国の計画生育に違反した場合、かなり高くつくことも原因のひとつだ。
グローバル化のもと、各国が人口流動制限措置を緩和させていることが、海外出産増加の主な原因と見られる。
たとえば、米国やカナダは、中国大陸部住民を対象としたビザ制限策を緩和、個人向け観光ビザによる滞在期限は半年間に延びた。また、香港・マカオ地域では、CEPA協定(経済貿易関係緊密化協定)にもとづき、大陸部10数都市の住民を対象に、「香港・マカオ個人旅行」を認め、有効期限1年のマルチビザを発給、一回の滞在日数は7日以内とした。