経済協力開発機構(OECD)国際学生評価プログラム(PISA)の発起人Andreas Schleicher博士は26日、北京で開かれた北京大学付属高校教員・生徒・保護者との交流会で、「中国の教育の優れた点は、社会全体が教育および教育をめぐる環境の公平さを重視することにある。一方、最大の問題は、学生の自発的な学習能力をいかに高めることかということだ」と指摘した。中国新聞社のウェブサイト「中新網」が伝えた。
交流会でのSchleicher博士の談話内容は次の通り。
数十年前は、どの国の教育も似たり寄ったりで、学校で知識を丸暗記すれば、社会に出て役に立つと考えられていた。しかし経済発展に伴い、ネットや携帯電話でリアルタイムの情報が瞬時にして手に入るようになった現代社会では、知識の理解力や知識を用いた革新能力など「考える力」が重視されるようになった。
1995年来、年に一度中国を訪れているが、来るたびに中国教育の急速な発展を目の当たりにする。とりわけ、教育のクオリティ向上には目を見張るものがある。中国の優れた点は、教師から保護者・学生本人に至るまで、社会全体が教育を極めて重く見ていることだ。どの国も教育資源の分配不均等という問題を抱えているが、この問題を軽視する国もある。それに比べ、中国は相応の措置を講じ、不足部分を補うよう努めてきた。その結果、他国に比べ教育における平等が実践されているといえるだろう。
中国の教育における問題点は、大人数クラスのため、全ての学生が教師から指導を直接受ける機会が非常に少ないことだ。また勉強や受験など外部からの圧力が大きく、そのような圧力のもとで学ぶ学生が、圧力が何らかの理由で軽減した場合、学習の習慣を継続できるかどうかは、はなはだ疑わしい。学習に対する学生の自発性と学習能力をいかに高めるかが、中国の教育が今後乗り越えなければならない最大の問題となっている。
優れた教育システムとは、資源の分配が合理的に行われ、効果の高い教育システムであるべきだ。卒業率の高さを重視するだけではなく、卒業後に学生が社会で成功する能力も重視する必要がある。たとえば、フィンランドでは、学生の学習能力が高く、「自分はなぜ学ぶ必要があるのか」「自分は何を学ぶのか」を十分理解した上で学んでいる。
1997年にスタートしたPISAは、OECDが義務教育終了段階の15歳の生徒を対象に、彼らが将来の国際競争力を備えているかどうかについて調査・評価し、各国間での比較を行うプロジェクトだ。上海市は2009年に初めてPISAテストに参加、世界トップの成績を残し、センセーションを巻き起こした。
この出来事も、迅速に変化する世界を示すひとつの事例だ。20年前は米国の教育が世界トップを誇っていたが、今や追い越されようとしてる。今日上海がトップになったとしても、明日はどうなるか分からない。中国の教育関係者は、自分達に足りない点について考えを深め、改善するための道を探ることが求められている。
「人民網日本語版」2011年9月27日