「国民全体が不安を抱えて生活する時代に突入」という言葉を最近、中国の各メディアで目にする。中国共産党の機関紙「人民日報」(海外版)も13日付けの記事で、「上海のある心理研究機構がこのほど、都市部に住む1000世帯の家庭を対象にしたアンケート調査を実施し、『我々の生活から“喜び”が徐々に消え去り、変わって“不安”が現代人の抱える精神的問題となっている』との結論を下した」というニュースや「中央人民広播電台」(CNR)の 経済番組「経済之声」が最近放送した「中国では近年、心理的な病気を抱える人が急増している。これについて、ある専門家は国民が一種の不安症を抱えている事の証で、中国は国民全体が不安を抱えて生活する時代に突入した」とするニュースを紹介した。人民日報が発行する健康雑誌「生命時報」が報じた。
蘇州栄格心理コンサルティングセンターのシニアスーパーバイザー王国栄氏は「不安は単に個人の心理的病気ではなく、社会病でもある。不安が蔓延した社会で生活している我々は危険と隣り合わせの中で生きているという思いになる」と指摘。
▽言いようのない不安や将来への不安
外資系の企業で働く李莉さん(28)は、北京で一人暮らしをしている。毎日きれいな服をまとい、お化粧バッチリで通勤する李さんだが、彼女の表情はどこか不安そうで、ひどく疲れているように見える。李さんは取材に対して、「以前から友達に心配性だと指摘されていて、飛行機に乗ると事故が心配になり、出かけると鍵をちゃんとかけたか心配になる。会社では、上司に発言を求められると手に汗を握るほど緊張し、得意先に電話をかける時も、相手の態度が悪かったらどうしようと心配になり心の準備に何十分も要する」と打ち明けた。李さんは最近、心配性がさらにひどくなっているといい、車を運転する時は、交差点に差し掛かるたびに何度も安全確認をし、付き合いでよく知らない人と食事をしなければならない時は、気持ちがふさいでしまうという。李さんは「ひどい時は、心臓がドキドキして、息もできないほど緊張し、どうしてよいか分からなくなる。しかもこんな症状が予兆なく突然起こる」という。
李さんのような症状を多少経験したことがあるという人は少なくないだろう。中国青年報社会調査センターのある調査によると、中国で一度も不安を感じたことがないという人はたった0.8%しかいなかった。つまり、ほぼ100%の人が不安を感じているということだ。このような“不安”は人の感情を破壊する要因で、我々に常に不安に追われているかのような生活を余儀なくさせる。不動産価格の高騰や仕事上の不安に加え、結婚相手が見つかるのかという不安、配偶者の浮気、老後の生活など、まだ起こっていないことでも、最悪の事態を想像してしまう。
王氏は「不安になる気持ちは軽度のものから重度のものまで大きく4つにわけることができる。▽体が緊張している状態で、リラックスできない状況が続き、いつも眉をひそめている▽自律神経系の問題で多汗症、目まい、呼吸過多、トイレに行く頻度が高くなるなどの症状が起こる▽仕事のことや健康のことなどで、言いようのない不安に襲われる▽周囲の小さな変化や他の人の言動に過敏になる。このような不安は、他の心理的疾患と比べて複雑で、個人だけでなく社会をも巻き込む。人が不安になるとイライラし、仕事の効率が落ち、日常の生活、他の人との関係にまで支障をきたす。そして、社会全体の幸福感が低下し、将来への不安感が高まる」と指摘。