法廷審理中、証拠資料に目を通す汪被告
上海市浦東新区人民法院は10月31日、日本に留学中の中国人留学生が上海浦東空港で母親を刺した事件の第一審判決を下した。汪被告は傷害罪の罪で懲役3年6カ月が言い渡され、犯罪に使われた2本のナイフは没収された。新華社のウェブサイト「新華網」が伝えた。
今年3月31日、留学先の日本から一時帰国した汪被告(24)は、上海浦東空港に出迎えに来た母親と留学費用の仕送りをめぐって口論になった。汪被告は荷物の中から2本のナイフを取り出し、全く無防備な母親の頭、腕、腹、背中など数カ所に切りつけ、重傷を負わせた。
人民法院は、故意に他人の身体を傷つけて重傷を負わせた汪被告の行為は傷害罪にあたるとの見解を示した。弁護側は、精神鑑定結果の通り、事件当時「自己認識力なし」の状態にあった汪被告には、責任能力がなく、犯罪として成立しないと主張した。しかし、法院は、精神鑑定で認められた「自己認識力なし」は、汪被告が「自分自身が病気である」という認識を持っていないという意味での「自己認識力なし」であり、犯行時に自分が何をしたかを認識できず、自分をコントロールできなかったという意味ではないとし、「自己認識力なし」がそのまま「責任能力なし」に結びつくものではないと、弁護側の主張を退けた。
今回の事件の裁判長を務める上海浦東法院刑事法廷の馬超傑裁判長は、「症状が発症している時に、精神症患者が刑事責任を一切負えないという訳ではない。病状の程度や発症のスピード、あるいは自己認識・抑制力が全て失われていたのか部分的に失われていたのかにもとづき、精神鑑定結果も加味し、責任能力なし或いは一部有り、を判定しなければならない」と話した。今回の事件では、汪被告が自分の行為を認識しコントロールする能力を完全に失ってはおらず、自分を抑える能力がやや「弱まっていた」だけと判断され、刑法第18条第3款に定められた「自己の行為を認識し、抑制する能力を完全に失っていない精神病患者が罪を犯した場合は、刑事責任を問われるが、できるだけ罪を軽くするか刑を減軽することができる」という条項が適用された。
「人民網日本語版」2011年11月1日