中国外交部翻訳室で働くためには、過酷な訓練に耐えなければならない。1年間のうち150日間は海外出張で、「時差ボケで真夜中に目を覚まし、どこにいるのかも分からない」という。中国の特色ある語句、漢詩、典故を翻訳する場合は、字面よりも内容をよく伝える必要がある。中国外交部翻訳室英文所の費勝潮・所長兼カウンセラー、周宇・副所長はこのほど、広東外語外貿大学で講座を開き、外国語通訳のノウハウや知られざる苦労話を紹介した。広州日報が報じた。
◆時差ボケで真夜中に目を覚まし、どこにいるのかも分からない
費所長は「すべてのチャンスを利用し、さまざまな外国語大会の審査委員になる」と述べ、自らを「スター発掘人」と称し、外国語翻訳者の募集について説明した。広東外語外貿大学の洪磊さんは省の内外で有名で、2008年には北京で開催された全国大学通訳コンテストに参加し、逐次通訳の部で1等賞を獲得した。結果が発表されてから数分後、費所長は洪さんの電話番号を入手するとすぐさま連絡し、外交部翻訳室の就職試験に参加する意志がないかをたずねた。外交部翻訳室に就職した新人は、業務面と心理面の「過酷な訓練」に耐えなければならず、費所長も例外ではなかった。
外国語通訳者は常に国家官僚に付き添い海外出張し、体裁よく見える。しかしその業務の裏にある、危険と困難について知る人は少ない。費所長は、「中東で政局が緊迫化し、爆破テロ等が生じた場合、企業や駐在員は外に向かって逃げるが、外交官や通訳者は中に向かって駆け込まなければならない。インド洋大津波、四川省大震災の際も、私たちは現場に滞在していた」と語った。
また時差ボケや連続勤務といった辛さもある。費所長は、「出張が多い場合、1年間で150日間は海外にいる。時差ボケで真夜中に目を覚まし、どこにいるのかも分からない。通訳をやっていると、トイレで用を足すのもやっかいだ。トイレに行かなくてすむために、喉が乾いても水を飲まない。連続勤務の時は、水を飲むひまもない。翻訳室の女性社員は、ハイヒールをはきながら優雅に走り回り決して転ばないという、一種の技術を身につけている」と語った。
通訳の最中に気を抜くことはできない。周副所長は仕事に関するこぼれ話を紹介した。ある日、宴会の通訳を務めた際、3人の同僚が交代で通訳をし、食事をする時間を確保した。隣にはインドの官僚が座っていて、同僚らがその通訳に行くたびに、「Have you been to India?」ときかれた。そこで中国人官僚に向かい、「インドに行かれたことはありますか?」と翻訳したところ、中国人官僚は「何度も質問に答えた」と言った。インド人官僚は、その質問を通訳者にしていたのであったが、通訳者は中国人官僚に対する質問だと思い、1人ずつ質問を繰り返してしまったのだ。