資料写真:楊逸さん
楊逸は、20歳を過ぎてからようやく日本に留学に来た中国人だが、2008年に小説『時が滲む朝』で日本最高文学賞である芥川賞を受賞、外国人として唯一の受賞者となった。
「学生がいなくなったので、家で小説を書いた」
1987年、日本に親戚がいた楊逸は、23歳で日本への留学を決意。当時の彼女は日本語が全くできず、食べていくために、毎日十数時間のアルバイトをしなければならなかった。彼女の日本語をレベルアップさせたのも、入学した日本語学校ではなく、仕事中に話をするバイト先のおばさんたちだった。
中国語新聞の記者になったこともあったが、新聞社のわずかな収入だけでは生活も厳しかった。中国語教師はまだましだったが、「2005年に中国国内で反日デモが起こり、日本の中国語学習者が激減して、私の在籍していた学校でも学生がいなくなってしまいました。家に帰っても何もすることがないので、小説を書くことに没頭し始めたんです。」楊逸は4万字の処女作「ワンちゃん」を2週間で書き上げた。
「刺身文学」の中での執筆
『ワンちゃん』は、日本に暮らす中国人、王さんとその周りの日本人との間に起こった面白おかしい出来事を書いた作品である。2007年に文学新人賞を獲り、後の芥川賞受賞への基礎を固めた。
日本で流麗な日本文を書く外国人は多いが、文学賞を獲る者は少ない。最も大きな理由は、日本文学とその他の国の文学とでは、その内容表現に大きな違いがあるからである。