第11期全国人民代表大会(全人代)第1回会議は11日午後、人民大会堂で第4回全体会議を開き、華建敏・国務委員兼国務院秘書長が国務院機構改革案について説明を行った。
今回の国務院機構改革案では、15省庁を再編、省(中国語「部」)クラスは4つ削減する。中でも工業・情報化部、交通運輸部、人力資源・社会保障部、環境保護部、住宅・都市農村建設部の5省が特に注目される。これにより「大部門体制」を突破口とする行政改革の幕が開かれた。
▽「大部門体制」の鉾先は「九竜治水」
従来の行政改革の基本的な立脚点は「簡素化・統一・効率化」だったが、「大部門体制」改革は部門統合と権限統合の有機的統一をより強調する。「九竜治水」とは、多くの部門が同一の管理に関わるさまの形容に、長年社会で使われてきた言葉だ。
南開大学「大部門体制改革課題チーム」の朱光磊教授によると、「大部門体制」とはこうした問題の解決のため、権限や業務範囲が重なる事柄を1部門の管理に統合することを指す。
人材育成市場の管理を例に取ると、労働部門は職業試験の実施、試験教材の編纂、育成機関の運営、職業資格の認証など。人事部門も遅れまいと、人材認証センターの設立、人材開発リストの編纂、人材認証の実施などを担っている。
改革案では、発展改革委員会・国防科学工業委員会・情報産業部の工業管理面の権限を統合し、「工業・情報化部」を設置。交通部と民航総局の業務、都市部旅客輸送における建設部の指導業務を統合し、「交通運輸部」を設置。人事部と労働保障部の業務を統合し、「人材資源・社会保障部」を設置する。
「『大部門体制』改革は政府部門間の摩擦の調整コストを削減し、行政効率を引き上げ、部門間の責任のなすり合いを部門内部の協調に変え、科学的発展観の要請をよりよく実行する上でプラスだ」と楊子強代表は指摘する。
▽「大部門体制」、最も喫緊の改革から着手
「問題は改革の重点、旧体制の突破口と新体制の成長点だ。『大部門体制』は最も喫緊の改革から着手する。改革開放後30年の発展を経て、中国は生存型社会から発展型社会へと転換した。これが『大部門体制』改革の基本的な背景だ」と遅福林委員は指摘する。
経済発展モデルの転換が環境保護に突きつける要求は次第に高まっている。「環境保護部門は環境保護分野における政策決定上の地位をいまだ真に確立しておらず、監督部門が乱立している」と遅委員は言う。「環境保護部」の設置はまさに現在必要とされ、環境整備と生態保護の強化にプラスとなる。
新しいタイプの工業化路線を歩む上での喫緊の課題は、情報化と工業化の融合の推進だ。今回の改革では「工業・情報化部」を設置する。中国移動の除龍・執行董事はこれについて「現代的な工業情報化へ向けて発展し、ハイテクと伝統製造業の融合を推進し、工業大国から工業強国への転換を実現する上で有益だ」と指摘する。
発展のもう一つの喫緊の課題は、民生の改善と公共サービスの強化だ。人的資源・社会保障部、住宅・都市農村建設部、食品・薬品監督体制の一層の整理は、こうした問題に真っ直ぐに向き合うものだ。
労働保障と人事管理も近年「先に統合、後に分離」の過程を経てきた。人的資源・社会保障部の設置は、人的資源関係の多くの改革を直接後押しする。住宅・都市農村建設部は、住宅保障制度の整備、都市と農村の統合的な計画を一層際立たせる。
科学的発展観の要請に照らし、経済・社会発展上の必要と大衆の必要が「大部門体制」の優先的な選択基準となる。山東省臨沂市長の張少軍代表は「『大部門体制』の方向選択は正しい。必要な所から着手し、急ぐ事柄を先に行ってから、一歩一歩押し広げていく。これは着実なやり方だ」と指摘する。
▽「大部門体制」は権限と責任の一致を堅持
専門的な管理業務に照らし政府機構を設置する「小部門体制」と異なり、「大部門体制」は内容の重なる複数の業務を1部門の管轄下に統合し、その権限も拡充することが特徴だ。
政策決定権・執行権・監督権の相対的な分離と制約がなければ、真の大部門体制はない。これは「大部門体制」改革による権力肥大を防ぐ鍵だと代表らは指摘する。
「権力が大きくなれば、責任も大きくなる」――。部門の権限の調整・拡充と同時に、その責任も相応に引き上げる必要がある。中国工商銀行安徽分行行長の趙鵬代表は「『大部門体制』の実施には、政府業務評価システムの構築と問責制の推進の結合も必要だ」と指摘する。
▽「大部門体制」への道のりはあとどれくらいか
「大部門体制」は一度に成功するものではない。趨勢を把握し、積極的に模索し、たゆまず推し進めると共に、テンポを捉え、順を追って漸進させることが必要だ。長期目標と段階的目標の結合、全体設計と段階的実施の結合が求められる。今回の国務院機構改革において理解を要する重点はこれだ。
「大部門体制」を含む行政改革は、中国の歴史にも世界の歴史にも先例がない。国家行政学院の袁曙宏副院長は「積極確実、秩序ある推進が必須だ」と指摘する。
部門の機能分担・職責区分といった利権に触れる難題も改革の複雑性を深める。
世界各国を見ると、先進国の省庁数は現在一般的に20以下だが、いずれも長い時間をかけて段階的に改革を進めていった結果であり、発展途上国は多くが20以上、中には40~50という国もある。
中国は現在、経済路線・社会モデル転換の正念場にあり、重要な改革任務を担っている省庁もある。こうした改革やモデル転換の任務が完成する前に、政府機能の段階的な要請を考慮すると、こうした分野では「大部門体制」の推進を焦るべきではない。遅福林委員は「『大部門体制』の推進は、まだ中央で模索中の改革だ。現実的な状況から判断すると、中央と各級政府の権限の一層の明確化には、なお時間が必要だ」と指摘する。
「人民網日本語版」2008年3月12日