ベトナムで開かれたASEAN地域フォーラムで、クリントン米国務長官は事前に用意した原稿に沿って「南中国海における係争の解決は地域の安定にとって『極めて重要』」と大弁舌をふるい、「この係争は海上貿易や他国が公海に入る上での妨げとなっている。係争の解決は『米国の国益に関わる』」と主張した。さらに「米国は主権を主張する全ての国々による協力・協議を支持する。われわれはいかなる国による武力の行使または威嚇にも反対する」と表明した。(文:陳虎「世界軍事」編集長。「人民日報海外版」コラム「望海楼」より)
一見するとクリントン長官の発言は弱者に助太刀し、公正や正義のために声を上げるような響きが強い。だが、細かく観察すると、別の意図が見えてくる。
米国はなぜ突然、南中国海問題にこのような関心を抱くようになったのか?クリントン長官の挙げた理由は一見堂々としている。「紛争によって航行の自由が妨げられ、地域の安定に影響を与えているからだ」----。だが実際には、南中国海問題の歴史は長いが、公海上の平和的航行に重大な影響が生じたとは過去数十年もの間聞いた例がない。自国の貿易・海上輸送が妨害されたと主張した国も今日に至るまでない。近年、この地域の国々の経済が急速に成長し、海上貿易も日増しに発展していることは、見識ある人の目には明らかだ。地域の安定についても、中国とASEAN諸国など他国との2国間会談では「地域の平和や安定を脅かす事態は現在ない」とみなが表明している。