記者:外国との文化交流の活動を長く続けてきた豊富な経験があると思うが、現代の世界における中国文化の位置づけについて、どう考えているか。
黄友義:中国文化と聞くと、以前なら「広くて奥深い」という言葉が思い浮かんだだろう。中国文化の中身は無限大だ。しかし今、中国文化をアピールするなら、「和而不同(自己の主体性を堅持しながら、他と協調すること)」という言葉が相応しいと思う。この短い言葉は大切なキーワードがたくさん含まれており、例えば、「協調」、「協力」、「他人を尊重すること」など、西洋文化とは違った価値観である。西洋文化はもっと個人主義的であり、自分のものを世界中に広めることを強く意識している。中国の「和而不同」という価値観は経済、文化、外交など様々な面に浸透している。
記者:「十一・五」から始まった中国文化の「走出去(国際化)」戦略の過程での発展と変化に注目すると、今後に繋がるヒントは何かあるだろうか。
黄友義:ここ数年の変化は本当に大きい。70年代、まだ文化交流を始めたばかりの頃、海外のメディアには中国のニュースなど1つもなかった。今はどうだろう。ある時ふと、アメリカの新聞を開くと、トップニュースの中に中国関係のものが4つもあった。ロシア関係のものは1つもないのに。また、外文局を例にあげると、ここ数年の発展の中で、海外メディアへのアピールの方法はより多方面に及ぶようになった。私たちは世界で繰り広げられる様々なイベントに積極的に参加している。また、交流というのは常に双方向のものであるため、中国の読者がもっと良く海外の事情を理解できるよう、外文局では外国籍の者が大勢活躍している。海外でのチャイナネットのアクセス率は常にトップであり、今後も現地化が大きな課題となるだろう。
ここ数年の経験から学んだ事は、「やる人がいる」ということが何よりも重要であるということだ。1つのことを成し遂げるには良い人材がなくては始まらない。今後も人材の育成に力を入れ、もっと強いチームパワーを発揮していきたい。
記者:今年の提案は?
黄友義:今年の提案は翻訳の法整備に関するものである。現在、中国の翻訳市場は実に混沌としていて、価格も一定でないし、翻訳事業への参入にも決まった規則が無い。資格や能力に対するきちんとした条件もなく、翻訳会社は自由に設立できるが、翻訳の質は保証できない場合が多い。世界との交流が益々進展していく中で、文化・経済分野で翻訳が果たす役割は非常に重要である。翻訳の仕事に長年従事している者として、私はずっと翻訳市場の体制を整備するべきだと提言したかった。関係者にも意見を仰いだが、もし翻訳業界の仕組みを整備したいのであれば、まずは関連した法律を作らなければいけない。そのため、私はまずは法を作るべきだと提案を提出した。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2011年3月5日