過去20年間、日本経済は全体的に不景気で、政治も安定せず、社会は保守的になり、日本の識者は日本を再興するため国民に危機感を促してきたが、その効果はあまりみられなかった。ところがマグニチュード9.0の地震と大津波、原発事故が日本人に現実的な危機をもたらしたことは言うまでもない。このことが日本を全面的に変える歴史的出来事、さらには19世紀に日本が味わった存亡の危機、20世紀の敗戦後と肩を並べる状況になる可能性がある。シンガポール紙「聯合早報」が23日付で伝えた。
▼政治的影響:政治的合意に達するか否か
短期的には日本の政治的危機は免れるだろう。3月初め、特に前原誠司外相が辞任後、日本の主流メディアは菅直人政権が3月には解散すると予測していたが、突如襲ってきた災害でなんとか息を伸ばした。日本政府の今回の対応は、阪神淡路大震災のときよりも迅速だったことから、現内閣に対する国民の信頼度が高まった。
ただ、長期的には、日本が政治的合意に達するか否かまだ不透明な状況にある。日本の復興にはあと数年かかるが、その後どのような日本を建設するかといった課題が再び浮上したときに、今回の災害で経験を積んだ、戦略的観点と指導力のある政治家が現れるかに日本の前途がかかっている。
▼経済社会への影響:4つの積極的変化
短期的には日本経済が災害による深刻な影響を受けることは間違いないが、中長期的にみると、災害による経済への影響は必ずしも負の面だけとは限らない。少なくとも次の4点は積極的な変化として期待される。
(1)日本企業の省エネルギーや環境技術が飛躍的に向上する。
(2)空前の規模の災害復興により、経済成長が促される。政府の支援によりインフラや住宅建設が進められ、企業や個人が大規模な投資を行う。すでに成熟した日本社会にとってはこの20年間なかったことだ。
(3)日本経済の“一極集中”の状況に変化が起こり、日本経済はバランスの取れた地域発展の道を歩むことになる。今回の災害は過度集中によるハイリスクを反省するきっかけとなった。経済の東京への過度な集中を回避する議題が議事日程に上がってくるだろう。
(4)日本経済の国際化、グローバル化が推進される。日本企業が海外投資を拡大し、海外市場を開拓し、国内の改革が加速され、国内市場開放に向けた圧力がさらにかかるものとみられる。こうした経済活動の対外開拓によって社会がオープンになっていくだろう。順調に行けば、日本でもう一度明治維新が起こり、戦後の復興後、第三の開国の波が押し寄せてくるかもしれない。