3月11日に発生した地震、津波、原発事故による被害は戦後60年で日本最大の災難といわれている。原発事故が抑制できれば、世界経済への影響はある程度制限される。当然、日本の隣国であり、最大の貿易相手である中国の経済、特に中日経済貿易関係への今回の大災害による影響は免れない。
まず、マイナス影響をみると、中国の多くの輸出企業が日本のハイテク部品を輸入し組み立てた後、欧米に輸出しており、日本のハイテク部品に対する需要が比較的高い。東北地方では短期的に正常な生産を回復するのは難しく、半導体の供給不足或いは価格が上昇する可能性がある。中国の関連メーカーの生産と輸出への影響は免れないだろう。しかし、日本からの輸入は主に日本の首都圏や中部、阪神など地震による影響が少ない経済発達地域が多いため、東北地方からの輸入は相対的に減少しても、その影響は短期的なものと予想される。
原発事故によって、日本は深刻な電力不足に見舞われている。日本での石油や天然ガスなどのエネルギー需要拡大によって世界のエネルギー価格が上昇する可能性がある。世界的なエネルギーの価格上昇は生産コストの上昇、輸入性インフレの加速などで中国にも影響するほか、日本の日常のエネルギー需要拡大によって中国との国際エネルギー市場での競争が激化する可能性がある。日本の原発事故は世界の原子力発電の発展にも予測できない影響を与え、中国の原子力発展戦略にも衝撃を与えるものとみられる。新規原発建設計画の承認停止や、運転中・建設中の原発に対する厳格な安全検査の実施、安全対策の強化を国務院が決定するなど、中国はすでに迅速な対応をしている。
次に今回の災害が中国にもたらしたチャンスを見ていこう。まず、今回の大震災によって自然と中日間の釣魚島問題による硬直が緩和された。巨大災害を前に、中国は日本に対して各方面から無私の援助を行い、国民感情を引き寄せた。良好な中日関係が中日経済関係の健全な促進のための条件をつくっている。
東北地方の被災地復興は中国企業に数多くのチャンスをもたらすだろう。被災地では物資が不足しているため、例えば被災後初期段階では農産品、水産品、食品の需要拡大、復興段階ではセメント、鋼材、アスファルト、その他建築材料など大きな需要が見込まれるが、これらの製品生産は中国が得意とするところだ。日本はこうした製品の中国からの輸入を増加する可能性が高い。一方、今回の災害による日本から中国への輸入に対する影響は限定的なものだろう。日本の対中輸出の主要地域は被災地ではなく、経済中心地にある。中国の対日輸出の増加によって、中日貿易における中国側の長期的な赤字に歯止めがかかるかもしれない。ここ数年は中日貿易が大幅に拡大を続けるものとみられる。
日本の対中直接投資は主に日本の経済中心地域からで、被災地の企業の対中直接投資は非常に少ない。近年、日本の対中投資は低迷状態にあるため、この状況がさらに加速する可能性は低い。日本の対中投資の大多数は優良資産で、撤退の可能性は低い。逆に被災後、復興のために大量の投資が必要となるため、投資機会が増え、中国企業による対日投資や買収などのチャンスが増加するものとみられる。(中国社会科学院日本研究所経済研究室主任 張季風)
「中国網日本語版(チャイナネット)」2011年3月23日