金融危機が発生してから、イギリス経済は重大な打撃を受け、昨年の新政権の発足後、政府は巨額の財政赤字を削減するために公共支出の大幅削減に着手した。新しい政策により市民の福利厚生費は減り、さらに、長期にわたる景気低迷により若者の就職難が続き、国民は不満を募らせた。
昨年12月、大学の学費引き上げに抗議するため、ロンドンで大規模な抗議活動が行われ、それも暴動事件へと変わった。大学生、高校生を中心とするデモ参加者は警察と激しく衝突した。また、今年6月末には、数十万人の公務員と教師がデモを行い、政府の年金改革案に抗議、その一部が暴徒化し、多くのデモ参加者が逮捕された。さらに、ロンドン地下鉄、航空部門の職員も、労働組合のリードの下でリストラに抗議するためのストライキを続けた。
今回、偶然発生した射撃事件は暴動の引き金にすぎない。経済問題こそが事件拡大の大きな原因である。西側諸国の中で、イギリスは最も遅く金融危機から脱出した国であり、景気回復も不安定な状態が続いている。今年第2四半期のGDP成長率はわずか0.2%で、第1四半期を0.3ポイント下回った。スタンダード&プアーズが米国債の信用格付けを引き下げ、ヨーロッパの債務危機が世界経済を揺り動かしたことによるイギリス経済への影響は、計り知れない。景気低迷という根本的な原因が解決されない限り、社会を安定させることは難しいだろう。
今回の大規模な暴動で、来年7月に行われるロンドンオリンピックの安全が懸念されている。財政緊縮策が実施される中、大幅なリストラによりロンドンの警備力は弱まり、伝統的なテロリズム、右翼組織のほかに、一般市民の不満が安全保障の新しい課題になった。ロンドンのジョンソン市長を含む政府関係者らは、暴動の発生後もオリンピックの安全保障に強い自信を示すが、現実にある多くのマイナス要因は懸念払拭を難しくしている。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2011年8月10日