だがロシア外務省は12日、これに真っ向から対立する声明を発表。「ロシア空軍の爆撃機2機による太平洋上空の巡航は、日本の安全を脅かすものではない。ロシアの爆撃機は国際法に厳格にのっとって太平洋の公海上空を巡航したのであり、他国の領空は侵犯していない。どの国にとっても通常の飛行訓練だ。しかも国際慣例に従い巡航について日本側に事前通告している。したがって日本の安全を脅かすものではないし、ロシア側には日本を狙った『敵対計画』もない」と表明した。ロシア軍のマカロフ参謀総長も12日「米国人はいつでもどこでも飛行できる。ごく一部の国が多少不満を抱いても、ロシア空軍が飛行を放棄することはない。ロシア空軍はこうした飛行をある程度限定する国際法を一貫して遵守してきたし、今後も遵守する」と示唆に富む発言をした
今年3月の東日本大震災後にロシアが人道支援の手を差し伸べたことから、ロ日関係の好転を予測する楽観的な声も出ていた。9月6日にはメドベージェフ大統領が野田新首相と電話会談して就任を祝福し、両国関係を発展させる考えでも一致していた。だがロシア人の論理が「援助は援助、領土は領土」であることは明らかだ。震災時の親切な援助も、電話会談時の外交辞令も、領土問題という「ゴルディアスの結び目」を断ち切ることはできなかった。下院選挙と大統領選挙を控えるロシア当局には、こうした行動を立て続けに繰り出すことで 日本側に対応の隙を与えず、「強いロシア外交」を再度顕示する狙いがあると見られる。ロシアの一連の行動は、野田新首相の主権意識や外交姿勢を瀬踏みすると同時に、領土問題に関する意思を日本の新政府に遠回しに伝え、その「アジア太平洋戦略」を推し進めるものだ。
野田首相にとって本来日ロ関係は、就任早々解決が必要な問題ではなかった。だがこうしたロシア側の再三の行動によって、領土問題は避けられなくなった。ある意味において、ロシア人は日本人の考えを見透かしていたようだ。野田首相は13日の初の所信表明演説で「ロシアとアジア太平洋地域のパートナーシップの構築に努める。日ロ関係については、最大の懸案である北方領土問題を解決すべく積極的に取り組む」と述べた。アナリストは、野田首相がロシア側の今回の「主権誇示」行動を厳しく批判していない点を指摘する。現在、日本の新政府はロシアの「横暴な振る舞い」に対して「自制を保つ」ことしかできないようだ。ロシアの政治評論家が分析するように、日本人は現在、ロシアの「横暴さの発露」に対して防戦の一手のみで、反撃する力は持ち合わせていないのだ。
「人民網日本語版」2011年9月15日