クリントン米国務長官は『フォーリン・ポリシー』最新号に寄稿した「米国の太平洋政策」で、戦略的重点を今後アジアに移す方針を明らかにした。
クリントン長官は「未来の政治はアフガニスタンやイラクではなく、アジアで決まる。米国はその行動の中心に身を置く。今後10年間の米国外交にとって最も重要な使命の1つは、外交であれ、経済であれ、戦略であれ、その他であれ、アジア太平洋地域に狙いを定めて大幅に投入を強化することだ」としている。
クリントン氏の文章に新しい発想は余りない。昨年夏にはタイで「米国は帰ってきた」と高らかに宣言し、軍事面の投入を中心に、これまでよりアジア太平洋地域を重視する方針を表明した。米国の「回帰」は政治、経済、安全保障関連の問題に深く食い込むものだ。
「米国は帰ってきた」はマッカーサーの名言だ。太平洋戦争中、一度は日本軍に敗れたマッカーサー将軍はフィリピンに再上陸した際、米軍の反撃の勝利をこう宣言した。それから60年余りが過ぎた。今日のアジアは当時とは明らかに異なる。米国はアジアで誰かに負けたわけでも、何かを失ったわけでもなく、過去2、30年近くのアジアの発展により巨額の利益を得ている。もちろんアジア諸国も米国との協力から少なからぬ利益を得ている。
米国はアジアを去ったことがないのに、どこから「回帰」するのか?ここ数年、米国はアジア諸国が急速な経済成長を遂げて新たな協力構造が徐々に形成されつつあるのを目の当たりにし、アジアの急速な発展に乗り遅れて地域問題での主導権を失うことをひどく恐れるようになった。「回帰」の目的は、1つは地域の発展からより多くの利益を得ること、もう1つは覇者としての地位を確かなものにすることだ。クリントン長官はこの点について「引き続きリーダーシップに携わり、発揮していきたい」と直言してはばからない。