南中国海の領有権をめぐる問題でベトナム、フィリピンの脅威が強まっていることを受け、台湾は東沙(プラタス)諸島と太平島への対空防衛ミサイル配備を検討中であることがこのほど、台湾「国防部」の内部報告書で分かった。配備が現実化すれば、南中国海問題で台湾当局が長年取ってきた中立的姿勢に大きな変化が生じるとの見方がある。人民日報系の国際情報紙「環球時報」が伝えた。
13日付の台湾紙「中国時報」によると、中国国民党の「立法委員」(日本の国会議員に相当)林郁方氏は12日、軍の内部報告書を引用して「南中国海危機論」を展開。ベトナムとフィリピンの南中国海での潜在的軍事力は、台湾に深刻な脅威をもたらすとした。ベトナムは海兵隊2万7千人と戦闘機「Su27SK」「Su30MKV」を南沙(スプラトリー)諸島に投入でき、フィリピンも海兵隊8300人と高速砲艦若干数を南中国海に投入可能。これが太平島と東沙諸島の実質的な支配権を持つ台湾にとって大きな懸念材料になるという。林氏は車載式型チャパラル・ミサイルまたは台湾国産の「捷羚」地対空ミサイルを東沙諸島と太平島に早期配備すべきと指摘。これを受け、台湾「国防部」の高華柱部長は「チャパラル・ミサイルはかなり古いが、捷羚ミサイルの性能はなかなか良い。台湾軍は島へのミサイル配備も視野に入れている」とミサイル配備を示唆しつつ、「南中国海情勢を軍事的手段、外交的手段のどちらで解決するかは、台湾当局の首脳層が決定すべき」とした。
南中国海をめぐる論争が日増しに熱を帯びる中、台湾「海巡署」も防衛強化の必要性を強く感じている。台湾島内には2008年から、東沙諸島と太平島を再び「要塞化」すべきとの声が上がっており、東沙島には全長2キロの滑走路を備える軍用空港がすでにある。太平島空港の拡張は必至の情勢だ。台湾軍が南中国海離島への配備を考えている捷羚ミサイルとチャパラル・ミサイルはいずれも中距離地対空ミサイルで、その原型は台湾空軍の戦闘機「経国号」(F-CK-1)に搭載された空対空ミサイル「天剣1型」(TC-1)。赤外線誘導方式で各種の低空飛行機に対処可能だ。島内の軍事筋によると、ベトナムの戦闘機「Su22」、フィリピンのCOIN(対暴動)機「OV10」は台湾が領有する島しょによく近づく主要機種で、台湾としては警戒せずにいられないという。
南中国海は、台湾が領有する島しょの数は少ないものの、戦略的にはかなり重要な位置付けにある。珠江、海南島、ルソン島、高雄の中央に位置する東沙諸島は、バシー海峡と南中国海を出入りする艦船が必ず通る地点。南中国海の心臓部に位置する太平島は台湾海峡、バシー海峡、バリンタン海峡の入り口という要所を守る地点にある。南沙諸島のうち最大(0.443平方キロ)の面積を誇り、淡水資源を唯一有する島しょで、戦時には航空機や艦船の中継地になる。
1950年代以降、台湾軍は南中国海で大規模な駐留を続けてきた。ベトナム戦争中は、米軍の助けを借りて東沙島の滑走路を補修し、同島を台中空港(台湾)-ダナン国際空港(南ベトナム)上にある米軍機の緊急着陸空港とした。太平島は一貫して台湾海兵隊の中隊が防衛を務め、各種の重火器を全て揃えていた。だが1999年以降、東沙島、太平島の防衛が台湾海兵隊から海巡署に委譲されると、両地の駐屯軍は過去最小の規模に縮小した。
「人民網日本語版」2011年10月19日