■得難い「好機」
日本経済が20年にわたり低迷する中、軍需産業の振興と武器輸出の拡大が一部の政治家や企業家にとって重要な目標となった。防衛省の発表によると、1989年に4400億円だった日本の軍装備維持費は、2010年には1.8倍の7923億円に増加している。特に日本経済が不景気な時期に、軍の費用は減るどころか大幅に増えている。それでも軍側は強い不満を抱き、一層の予算獲得を望んでいる。
防衛省は07年に軍需企業の稼働率が03年比で7%減少したことも特に強調している。つまり、生産能力が余っているということだ。日本防衛装備工業会と経団連防衛生産委員会による政界へのたゆまぬロビー活動に、民需品輸出の近年の全体的不調が加わり、武器輸出への期待が高まっている。
「2010年に防衛計画大綱を見直した際、外務省、防衛省、経産省と民主党は武器輸出規制の緩和で合意したが、当時の菅直人首相が同意せず、現在まで引き延ばされる結果となった」と、かつて内閣で安全保障を担当した政策研究大学院大学の道下徳成準教授は説明する。
日本は昨年11月30日に国産巡視船3隻をインドネシア政府に引き渡した。政府開発援助の形で行った、外国への初の武器提供だ。マラッカ海峡の海賊やテロ活動の取り締り、および武器拡散防止のためと日本政府は説明した。
それから1カ月もたたずに、日本政府は米国製F35A戦闘機を航空自衛隊の次期主力戦闘機に選定し、70億ドル以上を投じて計42機を購入すると発表した。武器輸出規制緩和の結果、米ロッキード・マーティン社のF35戦闘機開発プロジェクトに三菱重工が参加することも考えられる。
日本は南スーダンへの派兵も急いでいる。日本にとって南スーダンへの支援は、近年推し進めている「PKO尖兵」の最新の努力だ。野田佳彦首相はまさにこの得難い好機を見極めて、武器輸出解禁を決定したのだ。